もういいよね? (Page 8)
「……は……っ……」
長く、深い吐息。
それが合図みたいに、すべてが静まっていく。
しばらくして、彼女は動かない。
ただ、そこにある温もりだけが残る。
彼も、息を整えながら、抱いたまま離さない。
言葉はない。
余韻が、ゆっくりと夜に溶けていく。
彼女は、すぐには離れられなかった。
息だけが乱れている。
彼の胸に頬を寄せ、短く息を吸う。
その動きだけで、また身体が反応するのが分かった。
「……まだ…熱いね……」
言葉になりきらない声。
喉の奥で溶けて、吐息に変わる。
彼も、応えるように腕を回す。
抱く、というより、離さないための力。
肌と肌が擦れて、温度が戻ってくる。
彼女の腰が、無意識に揺れた。
止めようとしていない。
むしろ、確かめるみたいに、もう一度。
「……っ……」
小さな声が落ちる。
それだけで、十分だった。
時間は進んでいないみたいなのに、
呼吸だけが、どんどん近づいていく。
「…ねぇ…まだいい…よね…」
終わったはずの熱が、また広がる。
静まるどころか、深く、確実に。
このまま、続く。
そう思わせる距離で、二人は重なったまま——
夜は、まだ、手を離さなかった。
Fin.
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