もういいよね? (Page 3)

彼が無意識に肩を強張らせた瞬間、
彼女の手が、ほんの一拍、止まった。

そして次の動きは、少しだけ強い。

——試している。

彼女は、彼の反応を確かめるように、
同じ動作を、少し早く、少し深く繰り返す。

逃げる時間を、与えない。

部屋にあるのは、
布の擦れる音と、呼吸だけ。

その沈黙が、
「考える暇は、もういらないでしょう?」
と、無言で告げているようだった。

彼女の手は、いつも通りの位置から始まった。
肩、腕、胸元の外側。
距離だけが、妙に近い。

前屈みになった拍子に、黒い布越しの柔らかさが彼の腕に触れる。
一度、二度。
偶然を装った接触が続く。

彼は耐えた。
視線を落とし、呼吸を整える。

次の瞬間、彼女の身体がさらに寄る。
胸が、はっきりと当たった。

重みがある。
柔らかいのに、逃げ場のない圧。

彼の手が動いた。
ためらいは一瞬だけ。

布の上から触れた指先に、はっきりと伝わる。
弾力と、体温。
胸の柔らかい重みが、そのまま手のひらに乗る。

彼女は止まらなかった。
息を吸い、吐いて、その距離を保つ。

視線が合う。
次の瞬間、彼女が先に唇を重ねた。

強引ではない。
けれど、抑えきれない速さ。

彼は驚きながらも、すぐに受け止める。
逃げず、応える。

触れた胸が、さらに押し当てられる。
キスが深くなる。

唇が離れても、すぐにまた重なる。
一度きりじゃ足りないみたいに、短く、何度も。

角度を変えて、彼女がもう一度口づける。
今度は深く、逃がさないように。

彼は受け止めるだけだったはずなのに、
気づけば自分からも唇を追っていた。

吐息が混ざる。
キスの合間に、彼女の額が彼の頬に触れる。

近い。
近すぎる。

彼女の手が、ゆっくりと下へ滑った。
腰骨に触れ、指先がズボンの縁をなぞる。

引き止めない。
言葉も出ない。

ボタンに、指がかかる。
ほんの一瞬、そこで止まり、
次に何が起きるかを確かめるように。

そのまま、もう一度キス。
さっきより強く、長く。

胸が押し当てられ、
身体ごと包まれる感覚に、思考が遅れる。

「……んっ」

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