夜、声を重ねて (Page 6)
ベッドサイドのランプだけが、夜の静けさを照らしていた。
るりは浅倉のグレーのカットソーを素肌にまとい、窓辺に立っていた。
裾は太ももまで届かず、肌が湿った夜の空気にふれるたび、体温の余韻を帯びて艶めいていた。
浅倉はベッドに身体を預けたまま、無言でその背中を見ていた。
線の細い肩、濡れた髪、かすかに膨らむ呼吸――
どれもが、ひとつの罪のように、美しかった。
やがて、るりが言った。
「……ねえ、浅倉さん。
このまま朝が来なければいいのに、って思ったことある?」
「あるよ。今が、まさにそうだ」
るりはゆっくりと振り返り、唇に静かな笑みを浮かべた。
「そんなこと、似合わないのに。……でも、ちょっと嬉しい」
「変わったんだよ。君に出会い直してから」
彼女は一歩、二歩とベッドに近づき、浅倉の隣に腰を下ろした。
カットソーの胸元がわずかに開き、肌の起伏がひそやかに覗く。
彼女は、そのまま彼の手の甲に指先を重ね、言った。
「……私たち、これからどうなるのかなんて、考えても仕方ないけどね」
「そうだな。……でも、もう前みたいに、知らないふりはできない」
「ふふ、浅倉さんって、意外と情が深いのね」
「……君は、知ってたくせに」
その返しに、るりは目を細めて笑った。
「ええ。知ってたわ。
あなたに抱かれる女は、たぶん――忘れられないって」
彼女が口づけると、それは淡く、静かで、それでもふたりをまたひとつ結びつけた。
もう、後戻りなど考えていない。
そして、どこかで夜の終わりを告げる小さな音が、遠くで鳴った。
それは別れの予感にも、新しい始まりにも聞こえた。
――ふたりの何かが、ここから始まってしまったのだった。
Fin.
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