視界も中も、巨大ぬいぐるみに埋め尽くされる (Page 2)
朝、ベッドから体を起こすと、あのぬいぐるみが真っ先に視界に入った。
昨晩は壁にもたれかけないと倒れてしまいそうだったが、一晩かけて十分に空気を吸い込んだようで、どっしりとそこに座っている。
圧縮されていた面影はどこにもない。
毛はふわりと膨らみ、耳はぴんと立ち、長い腕がだらりと床に垂れている。
「おはよ…」
顔が思わずゆるみ、ぬいぐるみに話しかけてしまう。
ちょうど今日は業務の締め切り日だ。
いつもだったら一日中バタバタするのが目に見えていて朝から憂鬱だけど、疲れて帰ってくる私をぬいぐるみが待っていると思うと、むしろ仕事が楽しみになってしまう。
「買ってよかったぁ」
しみじみと独り言をこぼしながら、出勤の支度をして玄関の鍵を閉めた。
*****
予想通り、大量の仕事が私を待っていた。
すっかり暗くなり、タイミングを逃した夕飯をコンビニで調達しつつ帰路につく。
クタクタになりながらも、私は上機嫌だった。
上司の小言も、お局様の皮肉も、すべて軽く受け流した私の頭の片隅には、常にあのぬいぐるみがいた。
あの子が待っていると思うと、この疲労感すら愛おしい。
「ただいま」
誰もいないはずの空間に向かってぽそりと言いながら、ドアを開ける。
——いる。
部屋の奥には、やはりあの大きなうさぎが変わらずに鎮座していた。
すぐにでも飛び込みたい衝動を抑え、手を洗って部屋着に着替える。
満を持してうさぎに寄り添うと、開封したときよりもさらにふんわりとした感触が返ってきた。
「最高〜…!」
独り言を漏らしながらぬいぐるみに抱きつく。
大きな腕をとって背中に回すと、あの商品画像のようにすっぽり包まれる形になった。
体重を預けても、ぬいぐるみは安定している。
ああ、疲れて帰ってきて本当によかった…。
抱きしめたり頬ずりしたり、存分に満喫したころには、温めたコンビニ弁当がすっかり冷めきっていた。
*****
温め直した弁当で空腹を満たし、シャワーを浴び、もう一度ぬいぐるみを堪能した後の、ベッドの中。
「うーん…」
寝返りを打つ。
「だめだ…眠れない」
疲れているし、もう夜遅いし、明日も早い。
けど、生理前だからか…うずうずして眠れない。
無意識に自分の肌に指を滑らせると、ぞくりと体の奥が震える。
——いいや、しちゃおう。
スッキリしてそのまま寝よう。
どうせ眠れないなら、と体勢を整えるために身を捩ると、暗闇の中でうさぎと目が合う。
なんだか照れくさくなり、目を逸らしつつ私は自分の下着の上に指を添えた。
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