オフィス・アフター・アワーズ (Page 3)

彼は何も言わず、エンジンを止め、ドアを開けた。

助手席側に回り、そっと美咲の手を取る。

冷えた夜気が、肌を撫でた。

けれど彼の手は、驚くほど温かかった。

エレベーターを上がり、部屋へ。

鍵を開ける手がかすかに震えた。

「緊張してるのか」

後ろから落ちた声は、意外なほど優しかった。

「……してないって言ったら、嘘になります」

小さく答えると、橘はふっと笑った。

部屋に入ると、玄関のドアが静かに閉められた。

次の瞬間、背後からそっと抱きしめられる。

「美咲」

初めて呼ばれた、名前。

それだけで、身体の奥がじんわりと熱を持った。

橘の腕が、彼女の腰を強く抱く。

逃がさない、という意思を込めるように。

耳元に唇が触れた。

そっと、触れるだけのキス。

だがそれが、かえって堪え難い熱を呼び起こす。

「……何も、考えるな」

低く囁きながら、橘の手が彼女のブラウスのボタンに触れた。

ひとつ、またひとつ。

音を立てずに外されていく。

抵抗しなかった。

いや、できなかった。

彼の指先が肌に触れたとき、

美咲は息を止めた。

胸元をなぞる、ゆっくりとした動き。

触れているのは、ただ指先だけ。

なのに、肌がびりびりと痺れるようだった。

彼の手が、そっとブラウスを滑らせる。

肩を撫でるようにして、布が床に落ちた。

露わになった肌を、橘はじっと見下ろしていた。

冷たい眼差しではなかった。

まるで、壊れ物を扱うかのように慎重で、

けれど確実に、彼女を求めていた。

美咲の背に手を回し、ブラのホックを外す。

音もなく、それが外れた。

橘の視線が、彼女の素肌に落ちる。

だが彼は、すぐには触れなかった。

代わりに、そっと顎を持ち上げ、唇を重ねた。

深く、ゆっくりとしたキス。

舌先が触れ合い、絡み合う。

彼女の背を撫でながら、橘は美咲を後ろへと誘導した。

ベッドに倒れ込む。

身体を預けると、橘の手が、そっと彼女の頬を撫でた。

「……怖いか?」

問いかける声は低く、そしてどこか優しかった。

美咲は首を振った。

「……怖くないです」

彼は微かに笑みを浮かべると、

ゆっくりと彼女の肌に唇を這わせた。

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