吐息が響く準備室、抗えない指先 (Page 3)

視聴覚準備室のドアが、静かに閉まった。

雨音が少しだけ遠ざかり、室内は息を潜めたように静かだった。

照明を点けると、古びた蛍光灯がやわらかく白い光を落とした。

積まれたモニター、誰もいない椅子、そしてふたり分の湿った衣服。

すべてが音を立てずに、ふたりの距離を測っているようだった。

「……寒くない?」

先生が、私の前髪に指をのばした。濡れた髪が頬に貼りついていた。

その指先が、そっと頬にふれた瞬間――胸の奥が、音もなくふるえた。

「……少し、冷たいかも。でも、先生の手があたたかいから」

「そう?」

「うん。……ずっと、触れててほしいくらい」

私は、視線をそらさなかった。

この想いに気づいて、と願うよりも、
もうすでに知っているあなたに、触れて、と言っていた。

沈黙のまま、先生の手が私の頬から、あごのラインへとすべる。

そして――唇に、ふれた。

軽く、探るようなキス。

けれどその一瞬で、呼吸がすべて変わった。

唇が離れたあと、目を開けると、先生が困ったように笑っていた。

でもその目は、決して拒んではいなかった。

「ここで、キスなんてしたら……いけないのに」

「じゃあ、もう一回したら……もっといけないですね」

そう言って、私から唇を重ねた。

今度は深く。

そして、少しだけ甘えてみた。

彼の手が、腰にまわる。

私はそのまま、彼の胸に身体を預けた。

「真白……君は、わかってやってるんだね」

「うん。わかってて、してます」

シャツの隙間から指が入り、背中をゆっくりなぞる。

濡れたキャミソール越しの肌が、そこだけ熱を帯びていく。

「……触れても、いい?」

その問いに、私は言葉ではなく、自分の手で先生の指をとった。

そして、静かに自分の太ももへ導く。

スカートの上から、そっと撫でられる。

それだけで、脚の奥がずくりと疼いた。

「……真白、そこ……」

「もっと……先生の手で、私を感じさせて」

理性が、扉の外で雨に溶けていった。

この小さな準備室で、ふたりの境界線が、もう消えかかっていた。

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