弱みを握られた私が、やり手営業マンのペットになった話 (Page 3)

「んっ…」

私は必死に唇を噛んで声を抑える。こんなところを誰かに見られる訳にはいかないのだ。

「お疲れ様でーす!柳葉さん、研修にかかった交通費の精算お願いしますね」
「ひっ!」

私はびくっと身体を震わせて声の主を見た。桐生が数人の若手社員を連れて総務室へ来ていた。

「あれ、柳葉さん体調悪いんですか?なんか顔赤いですし」

「あぁ、いえ、大丈夫ですよ」

私は平静を装いながら書類を受け取った。ちらっと見ただけでも、いくつか間違いがあるのがわかった。桐生を見ると、口の端をニッと上げたのが見えた。下着の中でブルブル震えるおもちゃのことはできるだけ忘れて口を開いた。

「桐生さん、間違いがあるようですが…」

「えっ、本当。しまったな。どこでしたか?」

「ここですね」

「ああ、すみません」

彼は何事もなかったかのように訂正を始めた。その間も玩具は下着の中でブルブルと震えている。あまり音は外に響いていないのが不幸中の幸いだ。

(もう…早く終わってよ…っ)

下腹部から伝わる振動にだんだん耐えられなくなってきた私は、内心泣きたい気分だった。

「はい、これでOKです」

「ありがとうございました。ああ、そうだ」

「はい?」

「お昼、一緒に食べましょう」

桐生がそう言った瞬間、タイミングよく12時のチャイムがその場に響いた。

「…わかりました」

彼は満足そうに笑うと、後輩を部署に帰らせて私を総務室から連れ出した。総務課の方々の興味津々といった様子の視線を背中に感じながら部屋を出ると、ほとんど人のいないビルの非常階段へと連れて行かれた。
おもちゃのスイッチはオフにされ、一息ついた私は階段に腰掛けた。

「柳葉さんってさ、いつも一人でお弁当食べてるよね」

桐生は階段に私と同じく腰掛けると、おにぎりを頬張りながら話しかけてくる。

「そうですかね」

「うん。今日やっと初めて一緒に食べられて嬉しいよ。そうだ、せっかくだから『あ〜ん』ってして食べさせてくれない?」

「はい?」

思わず聞き返すと、桐生は自分の口を開けながら催促してきた。仕方なく、私は卵焼きを一切れ箸で掴むと彼の口に放り込んだ。

「美味しいね」

「それはどうも」

「じゃあ、今度はこちらから」

桐生は私のはしを取り上げて私の弁当箱からブロッコリーを取り出し、私の口の前まで運んできた。

「ほら、あーん」

私は諦めたように小さくため息をつくと、それを食べた。

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