聖女様のお仕事
筋肉質な男性をこよなく愛する女性、ひばりは夢の中で出会った青年の招待を受けて、別世界で聖女として過ごすこととなった。この世界の聖女の仕事とは、瘴気にあてられた男性と交わることで彼らを癒すことで…。
「聖女様がお目覚めになりました」
ぱちりと目を開けた私の傍らから、そんな声がした。
目に映るのは、ログハウスのような木製の天井だ。ここはどこだろうか?
…というか、聖女様とは?
上半身を起こして辺りを見回すと、今寝ていたベッドの脇に薄手の白いローブを着た、スラリとした体型の青年が控えていた。
「おはようございます、ひばり様。ご招待に応じていただき、光栄でございます」
ひばりとは、確かに私の名前だ。
窓から差し込む日差しで、彼の銀色の髪がキラキラと輝いている。
(招待?光栄?)
一体何の話だろう。顔に出ていたのだろう、青年が答えた。
「あなたの夢の中でお会いしました。あなたは筋肉質な男性達をはべらせていらしたので、私がそのような体型の男性達と毎日性行為をすることができる世界へいらっしゃいませんか?とお誘いしましたね」
確かにそんな夢を見た覚えがある。筋肉質な男性多めの乙女ゲームをプレイしていた時だっただろうか。
見た覚えはあるが、しょせん夢のことだ。
彼は恭しく頭を下げた。
「わたくしはアルフォンス・ミューラーと申します。ここ王都の神殿でございます」
アルフォンスが言うには、この世界にはしばしば発生する瘴気に侵された生き物たちが暴走するらしく、それを退治する専門の力自慢の男たちが大量にいるのだが、彼らはそれによって瘴気を大なり小なりうつされてしまうため、それを鎮め、浄化するためには聖女の体液が必要となるそうだ。
男性側としては飲むのもよし、粘膜接触もよし、触るだけでも効果あり、ということだ。
聖女とは基本的には異世界から招待された女性で構成されていて、本体は寝ている間に精神だけこの世界にやって来る人もいれば、転生して来る人もいるそうだ。
私は前者らしい。
「ひばり様の前にも、面食いを自称する女性を異世界から連れてきて聖女になってもらったのですが、”イケメンは眺めてるだけが一番良い”と帰ってしまわれたので人手不足で困っていたのですよ」
面食い。心の中で反すうする。
確かにこのアルフォンスという青年はまるで繊細なビスクドールのような造形をしていた。陶器のように滑らかな肌に、ガラス玉のように輝く瞳。
私がいた世界のイケメンとも少し種類が違う。この世界の人間がだいたいこのような顔をしているのなら、まあ確かに美形揃いかもしれない。
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