裏垢の怪異
SNS上の『裏垢男子』に紛れて捕食対象を狙う【紙袋】に関する報告です。【紙袋】は催眠術師を自称し「催眠術を応用した本番行為を伴わない性感マッサージ」を謳って対象の女性を引き寄せます。以下は【紙袋】と接触したと思われる女性の証言です。※最終ページのみごくわずかにホラー要素が含まれています。
すでに深夜0時を回った、真っ暗な部屋。
私は真剣な眼差しでスマホを凝視していた。
画面に表示されているのは——裏垢男子の投稿。
この状況、はたから見たら滑稽以外の何者でもないだろう。
「はあ…」
生理中。
やたら性欲が増す気がする。
そういう気分のとき、私はいつも裏垢男子のSNSを見てしまう。
気分が高まったところで、手や下着が血で汚れてしまうからひとりですることもできないけど。
あー、こんなふうに気持ちよくされてみたい。
妄想は膨らむけど、本当に会う勇気はない。
ただ見るだけ。
でも最近、どうしても気になる人がいる。
——【紙袋@性感催眠】さん。
催眠術のプロで、それを応用した本番なしの性感マッサージが得意…らしい。
動画の投稿も、顔出しもしていない。文字で「こんなことをしました」という投稿だけ。
『興味のある方はDMまで』
プロフィールにはそう書かれている。
どう考えてもうさんくさい。絶対怪しい。
それなのに…なぜか気になる。
今日もお気に入りのアカウントを一通り見た後、【紙袋】さんのアカウントにもどってきてしまった。
「うーん…」
スマホの画面を見つめたまま唸る。
どうしてこんなに気になるんだろう。
性欲のせいか深夜の勢いのせいか、気が付くと指が勝手に動いていた。
『来週の日曜日は空いていますか』
自分でも驚き、がばっと身を起こす。
「…あれ、えっ!?」
やばい。
私、完全に無意識でDM送った?
そんなつもりなかったのに、なんで…!
自分が送ったDMを見ていると、ざわざわと不安が押し寄せてくる。
とりあえずアプリを閉じよう。
…どうしよう、怖くなってきた。
とりあえず、朝までに返信が来なかったら…
いや、1時間…
ううん、30分!
30分待って、返信が来なかったら会うのはやめよう!
その後に返信が来ても無視しよう!
そんな身勝手なことを考えていると、画面上にポップアップ通知が現れた。
「あ…」
来てしまった。ものの5分足らずで。
『ありがとうございます。先にお伝えしておきますと、私は顔を隠して会います。あなたも隠したままで構いません。それでもよければ、お会いしましょう』
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