裏垢の怪異 (Page 3)
「あがりました…」
シャワーから出ると、照明が調整され雰囲気のある空間になっていた。
「どうぞ、こちらへ」
ベッドに促され、向かい合って座る。
先にシャワーを浴びた紙袋さんのバスローブから覗く引き締まった体にドキッとしてしまう。
…頭は相変わらず紙袋だけど。
「緊張なさると思いますが、リラックスすることが大事です。まずは手を」
「はっ、はい…」
私の手をとる紙袋さんの指は長く、節々が目立つ。そして、爪の形がきれいだ。
「最初は手に触れるだけです。あなたの緊張が解れるまで」
紙袋さんの指がゆっくりと手のひらをなぞる。
「わ…」
ふと、昔の彼氏に「これがフェザータッチだよ」と得意気に触られたときのことを思い出す。あのときはいまいちピンとこなかったけど、多分正解はこっちだ。
だって、手なのに…なんか、変な感じ。
手のひらから体に信号が伝わってくるみたいで、触られているところを見つめてしまう。
「見ていますね」
「!す、すみません…!」
びっくりした。
紙袋さん、私の手を見ていると思ったのに。凝視しすぎたかな。
「構いませんよ。そのまま見ていてください、私があなたをどう触るか」
「えっ…」
紙袋さんは手のひらをくすぐったり、指先をつまんですりすりと擦ってみたり、絡ませた指を前後に動かしてみたりと私の手を触る。
触り方なのか、背徳的な雰囲気のせいなのか、ドキドキして…気持ちいい。
「どうです、緊張は解れてきましたか?」
「…えっと…」
「それとも、よくなってきましたか?」
「!」
図星をつかれて顔が熱くなる。
顔どころか、手も、全身が火照っているみたい。
「あなたの気持ちのいい場所に触ります。目を逸らさないで」
す、と一度離れた紙袋さんの指先が、手のひらの中心に小さく円を描くように触れた。
「ひあっ」
甘い声が盛れて、口を抑える。
「はい、できあがり」
「あのっ…まって…」
なんで、どうして私、手のひらで感じてるの。
「さて…」
紙袋さんは最後に私の手を優しく握り、解いた。
触られていたところに、まだ熱が残っている。
「今日はここまでにしましょうか?それとも、もっと触れてみましょうか。あなたのしたいことをそのまま要求してください、私に」
どくん、と心臓が大きく脈打つ。
紙袋さんに触れられていないと、切ない。
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