夫がいる私に、同級生は「ずっと好きだった」と言った (Page 3)

店を出ると、夜の空気は少しひんやりとしていた。

駅へ向かう静かな道を、二人は歩く。

「今日は楽しかったな」

「うん。来るまでは気が重かったけど」

「そうだったの?」

「みんな変わってなくて、自分だけ年を取った気がして」

冗談めかしていうと、悠真は首を横に振った。

「そんなふうには見えなかった」

「慰めなくていいよ」

「慰めじゃない」

穏やかな口調なのに、その言葉はまっすぐ胸に届く。

「俺、高校の頃から思ってたけど」

悠真はふっと笑った。

「美咲って、自分を過小評価する癖あるよな」

突然名前で呼ばれ、美咲は息をのむ。

「文化祭のときも、みんなが帰った後まで一人で残ってただろ」

夕焼けの教室が脳裏によみがえる。

「そんなことまで覚えてるの?」

「忘れたことないから」

その一言に鼓動が大きく跳ねた。

「どうして?」

問いかけると、悠真は黙り、静かに答えた。

「好きだったから」

「高校の頃から、ずっと好きだった」

真っ直ぐな視線に、冗談ではないことだけはわかった。

四十五歳の今、そんな告白をされるなんて。

「ごめん。困らせたよな。でも今日会ったら、言わずに帰れなかった」

嬉しい。

でも戸惑う。

夫も家庭もある。

それでも胸の奥は熱を帯びていた。

*****

気づけば改札が目の前だった。

それなのに足が動かない。

そう思うと、胸が締めつけられた。

「どうした?」

美咲は小さく息を吸い込む。

言ってはいけない。

そう思うほど、本心はあふれてしまう。

「…もう少しだけ、一緒にいたい」

言った瞬間、鼓動が跳ね上がった。

悠真は驚いたように目を見開き、

それから優しく微笑む。

「俺も」

差し出された手に、美咲はそっと自分の手を重ねた。

その温もりが、二十七年の空白を静かに埋めていく。

二人は並んで歩き出す。

その先へ向かうことを、美咲はもう止めようとは思わなかった。

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