甘い香りに堕ちて (Page 3)
唇が離れたあと、彩花は息を大きく吸い込んだ。
胸が上下しているのに、呼吸はまだ追いつかない。
けれど涼は違った。
涼は、彩花を見つめていた。
まっすぐ。深く。逃がさない目で。
視線を返した瞬間、彩花の膝が震えた。
「……っ、見ないで……」
言葉はそうなのに、指は涼の服を離さなかった。
涼は何も言わない。
ただ、静かに彩花の頬へ手を添えた。
親指が、耳のすぐ下——首筋の柔らかいところをゆっくりなぞる。
小さな吐息が、彩花の唇からこぼれた。
「……あ……」
声は抑えているのに、抑えきれていない。
涼はその声を聴いた。逃さないように。染み込ませるように。
「彩花」
名前を呼ばれただけで、身体の奥がきゅっと波打つ。
目をそらしたいのに、そらしたら崩れてしまう気がして、余計にそらせなかった。
涼はゆっくり彩花の腰に手を回し、引き寄せた。
彩花の胸元に、涼の呼吸が直接触れる。
「……あの時の続きを、やり直そう」
彩花の喉が震えた。
何かを言おうとしても、言葉にならない。
ただ、頷くしかなかった。
「……うん」
その一言が、約束にも、覚悟にも聞こえた。
次の瞬間、涼の指が首筋から肩へ、そして鎖骨へと流れるように触れた。
触れるたびに、彩花の表情が少しずつほどけていく。
息を吸う音も、喉の奥で震える声も、全部、涼に晒されていく。
「……そんな顔、もっと見せて」
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