最初の恋も最後の恋も、きっと二人だけのもの (Page 5)
扉が開く音の後に「ただいま~」と声が響いた時、重なっていた男女の体は同時にカチンと凍り付いた。
「みく~ただいま~」
「お、お母さんおかえり!」
祐樹の下敷きになったまま、みくが上ずった声で返す。
「ゆうちゃんもまだいるよね、お夕飯食べてく?」
階下から投げかけられた質問に、祐樹が「いただきます!」と普段は使わない敬語を返した。
「じゃあ19時になったら降りておいでー」
みくの母親の呑気な声が聞こえなくなると、かわりにテレビの音が流れ始める。
体を繋げたままのみくと祐樹は、ダラダラと背中に冷や汗を流し、いまだに動くことができずにいた。
「ど、どうするゆうちゃん」先に声を上げたのは、下で縮こまるみくの方だった。
「どうするって……」
「今日はもうやめておく?」
母親が同じ家にいるのだ。バレたら気まずいどころの話ではない。
おずおずと中断を提案するも、祐樹はここで止めたくはないのか、悔しそうに唇を噛んだ。
「……止めなきゃ駄目? 俺はこのまま続けたい」
消え入りそうなほど小さな声で呟いた祐樹が、後ろ手に掛け布団を掴み、バサッと頭の上から被る。
そのままみくの上に倒れ込むと、部屋の中にはこんもりとした布団の山ができた。
「やっとみくと両想いになれて、やっと彼氏彼女になれて……やっと、こうやって繋がれてさ」
みくの中を愛おしい質量が満たす。布団を被って真っ暗の中、二人の瞳だけがキラリと光を放っていた。
「ごめん。俺、止めたくない」
「……私も。声出さないように頑張るから、止めないで」
*****
「ん、……っく、ん、……んむっ」
みくが声を上げそうになる度に、祐樹の口がそれを飲み込む。
みくが中を締め付ける度に、祐樹が喉をぐっと鳴らした。
「やば、も、イきそっ……」
果ての世界を先に見ることになったのは、みくではなく祐樹の方だった。
祐樹の動きが激しくなるから、布団が半分ズレ落ちてしまう。
明るくなった祐樹の視界に映ったのは、彼が何度も何度も想像してきたみくのいやらしい姿だった。
頬を赤らめ、唇を唾液で濡らし、瞳を潤ませて、髪を乱して──。
祐樹と同じクラスで授業を受けていた時と同じあの制服の上下を身に着けて、それを中途半端に脱がされ、男の──自分のモノを下半身で咥え込んでいる。
そんな恋人の姿を見てしまっては、童貞を卒業したばかりの男の我慢など一ミリの役にも立たなかった。
「っ、ぁ、出るっ……!」
腹筋を痙攣させた祐樹が、膜の中にびゅくびゅくっと白い精を吐き出す。
みくは肩で息をしながら、「ゆうちゃん大好き」と涙の滲む声で言った。
「私の初めて、もらってくれてありがとう」
「バカじゃねえの、それはこっちのセリフだろ」前髪が乱れたみくの額に、祐樹の柔らかい唇触れる。「俺に初めてをくれてありがとう」
みくは両手で恋人の頬を掴み、さっき祐樹がしてくれた額へのキスをお返しした。
「えへへ、ゆうちゃんが私の体で気持ちよくなってくれて嬉しい」
「……次は絶対、みくのことを先にイかせてやる」
悔しそうに唸った祐樹の下で、少女から女となったみくが、今までで一番美しく微笑んだ。
Fin.
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