最初の恋も最後の恋も、きっと二人だけのもの
隣同士の家に生まれた幼馴染のみくと祐樹は、みくの二十歳の誕生日に晴れてお付き合いをスタートさせた。互いが初めての恋人である彼らは、もちろん童貞と処女である。そんな彼らの“初めて”の機会がある日突然訪れるけれど──。経験値ゼロのみくと祐樹は無事に初体験を終えることができるのか!?
自室のドアが外から勝手に開かれたというのに、佐伯みくは特に驚きもせず、振り向きすらもしなかった。
「お前の母さん、二時間くらい出かけるってさ」
部屋に入って来るなり挨拶もなくみくに話しかけた男──深沢祐樹は、被っていたキャップを脱いでその辺に放り、慣れたようにラグの上に座る。
「ねえノックしてよ。着替え中だったらどうすんの」
「今更お前の裸なんて見てもなんも思わねーよ」
「うわ、でた幼馴染ムーブ。いくら生まれた時から一緒だからってさぁ」
ベッドから降りたみくが祐樹のすぐ隣に腰を下ろす。彼が封を開けたスナック菓子を、横から手を出して奪い取った。
隣の家に生まれた二人は、0歳の時からずっと一緒。
初恋を互いに捧げた彼らは、長い両片想い期間を経て、半年前のみくの誕生日に晴れて恋人同士となっていた。
*****
お菓子を食べながらダラダラとくだらないお喋りをするのが、彼らのいつもの日常だった。
「なんで制服なんか出してあんの?」
祐樹の視線を追ったみくが、ハンガーにかけられた高校の制服を見て「ああ」と小さく頷いた。
バイト先の後輩達から、それぞれの高校の制服を着てテーマパークに行かないかと誘われたのだ。
そう説明するみくのことを、祐樹が「卒業したの二年前じゃん。制服入んの?」と言ってからかう。
「太ったって言いたいの!?」とムキになるみくの頬を指でつまみ、祐樹がケラケラおかしそうに笑う。
意地悪な彼氏にいじられて、みくは段々と心配そうな顔になっていった。
「ちょっと待って、着てみるから」
立ち上がって制服を手に取るみくを、祐樹が焦った声で「おい」と止める。
「ゆうちゃん目閉じててね」
「まさかここで着替えんの!?」
「そうだよ?」
何を当たり前のことを、という顔で返事をしたみくが、躊躇いもせずに着ていたパーカーのチャックを下ろす。
祐樹は「マジかよ……」と弱々しく呟き、立てた両膝の真ん中に自分の顔をポスンと埋めた。
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