雪の密室で、名前を呼ぶ (Page 5)
朝の光が山荘のカーテンの隙間から差し込む。雪はまだ深く積もっていたが、どこかその白は、昨夜よりもやわらかく見えた。
ベッドの中、紗耶は遼の腕の中にいた。
「朝だね」と彼女が言うと、遼は背後からそっと腕を回し、そのまま彼女の髪に唇を落とした。
「もう少し、こうしていたい」
その声はまだ眠たげで、けれど真っ直ぐだった。
年齢も立場も常識も、彼の前ではすべて意味を失っていた。雪に閉ざされたこの場所では、彼の体温と鼓動だけが確かな現実だった。
「遼……」と呼ぶ声が、少しだけ震えた。
彼の手が、シーツの中で紗耶の身体をなぞる。
もう恐れもためらいもなかった。年下の彼の手つきが、自分のどこに触れればどう反応するのかを、しっかりと覚えていたことに気づき、胸の奥が熱くなる。
「もっと、知りたい。紗耶さんのことも、全部」
ささやくように言いながら、遼は彼女の肌に口づけを落としていく。
首筋、鎖骨、胸の膨らみのふち――紗耶は目を閉じて、そのひとつひとつを受け止めた。
彼の熱が、自分の内側をほどいていく。大人であろうとしていた鎧が、ひとつずつ、剥がされていくようだった。
唇が重なり、彼の指が静かに、けれど確かに彼女の深くへと触れていく。
雪のように冷たく張り詰めた日常が、とけて流れていく音が、聞こえる気がした。
「遼……もう、戻れないね」
「戻らない。僕は、ここから始めたいんだ」
彼の言葉が心の芯にしみた。
外では雪が静かに降り続いていた。
けれど、ふたりの間にはもう、春の気配が近づいていた。
Fin.
いい年して
年下の僕ちゃんと初体験なんて作り話にもほどが有る
るい さん 2025年10月9日