雪の密室で、名前を呼ぶ (Page 2)
ほんのわずかに触れただけだった。
けれど、指先から伝わる体温が、紗耶の心の奥底にまでじわじわと沁み込んでいく。
「あなた、まだ二十歳なのよ」
言い訳のようにそう呟いた紗耶の声は、震えていた。
遼は何も答えない。ただじっと、彼女の瞳を見つめている。
――冷たい目をしているのに、熱を帯びている。
それが、最初に彼に抱いた印象だった。
他の学生とは違う。どこか醒めていて、けれど人の心を見透かすような鋭さがある。
あの目に見つめられるたび、教師である自分が、ただのひとりの女になっていくような錯覚を覚えていた。
「それでも、今夜は……先生を、ひとりにしたくなかった」
その言葉に、紗耶の胸がふっと締めつけられた。
本当は――寂しかった。
誰にも見せないつもりだった心の隙間を、どうして彼はこうも容易く見抜いてしまうのだろう。
「もう充分、大人ですよ。試してみますか?」
そう言って、遼は紗耶の手を自分の胸元に導いた。
鼓動が、はっきりと伝わる。若々しく、まっすぐで、何も濁っていない。
その一方で、男としての強さを秘めた体温があった。
「……あなたに何がわかるの?」
問いかけながら、けれど紗耶はその胸から手を離せなかった。
抗えば抗うほど、心と身体がばらばらになっていく。
「先生が、誰よりも孤独だってことくらいは」
その一言で、何かが決壊した。
紗耶は立ち上がり、彼から距離を取ろうとした。
けれど、遼の手がそっと腰を引き寄せた瞬間、そのまま力が抜けた。
彼の腕の中は、思ったよりも穏やかで、温かかった。
「こんなこと、いけないのに……」
「いけないから、惹かれるんじゃないですか?」
耳元でささやかれ、紗耶の背筋がぞくりとした。
くちびるがそっと触れる。求められていると気づいた瞬間、心の奥の鍵が音を立てて外れるのがわかった。
彼の指先が、紗耶の頬を撫で、首筋に落ちていく。
くすぐるような軽さに、彼女は無意識に目を閉じた。
なぞるような手のひらの動きに、いつしか呼吸が浅くなる。
「こんな自分……見せたくなかったのに」
「見せてください。誰にも見せてない紗耶先生を」
囁きは熱を帯びていた。
火照った肌に彼の体温が移り、肩口のシャツをそっと落とされても、不思議と拒む気持ちは浮かばなかった。
柔らかい灯りの下、静かに触れ合う肌と肌。
紗耶の背中が、ソファに押しつけられるたび、身体の輪郭が浮かび上がる。
これが現実なのか、夢なのか――わからない。
ただ、いまこの瞬間だけは、誰にも邪魔されたくなかった。
いい年して
年下の僕ちゃんと初体験なんて作り話にもほどが有る
るい さん 2025年10月9日