2人の男に愛された夜 (Page 2)

スマホをポケットから取り出すと、祐弥からのメッセージが入っていた。

「今日も会ってるの?」
「また泣かされてるのか」
「俺の方が良いのにな」

勝手なことを…と思いながらも嬉しくなって返信をする。
「残念ながら、ちゃんと可愛がっていただきましたよ?」
そう、ベッドの中ではね。

嘘はついていない。
でもどうしてこんなに寂しいんだろう。
あの温もりが、ときめきが。
嘘のように跡形もなく消えてしまっている。

「会いたいな」
短いメッセージはすぐに既読が付いた。

終電が近い地下鉄のホームは、陽気な酔っぱらいの大声が響く。
スマホの画面を何度も眺めた後に、愁にメッセージを送る。

「会えて嬉しかったよ」
「もっと一緒に」

打ちかけて消した言葉は、愁には届かない。
届かないからきっと、私たちは上手くやっていけているのだろう。

「今日もありがと」
伝わらないであろう愛を込めて、送信ボタンを押した。

*****

駅の階段をのぼりきると、スーツ姿の祐弥が寒そうに待っていた。

「遅いよ」
「ごめんね待たせちゃって」

祐弥が私の鞄に手をかける。

「ほら、重いだろ?貸せよ」
「ありがと」

祐弥に鞄を預けて二人で肩を並べて歩く。
駅から徒歩3分。
吐息を感じられるくらい近くに居るのに私たちの手は重ならない。

「ただいま」
「お邪魔します」
「待ってね、今ハンガー出すから」
「お構いなく。勝手にやるからいいよ」

そういって祐弥は、クローゼットを開ける。
突然スマホからメッセージの着信を知らせる着信音が鳴った。

「あっ愁だちょっと待ってね」
「珍しいな。いつもこの時間は彼女と一緒だろ?」
祐弥の言葉が胸に刺さる。

「…そうね、今日は彼女も遅いのかもしれないね」
平静を装っているはずなのに声がうわずってしまう。

「馬鹿、動揺するなら早く捨てろよあんな男」
「でも…」

その先は言葉にできなかった。
祐弥の冷たい唇が私の唇を塞いだから。

ギュッと抱きしめられてスマホが床に落ちる。

(まだ確認してないのに…。)

チカチカと緑色のランプが点滅する。
私の心を見透かしたように、祐弥は両手で私の顔をおさえた。

10代のカップルみたいな余裕のないキスを何度か受け入れた後、ようやく解放されたと思ったら。
お姫様抱っこでベッドまで運ばれてしまった。

「ちょっ、重いでしょうに!」
「馬鹿言うなよ、これくらいなんでもないよ」
祐弥は私の上に馬乗りになると片手で器用にネクタイを外した。

Yシャツの襟元から鎖骨がのぞく。

「眼鏡…」
「分かってるって、お前が外してくれるんだろ?」
「うん」

銀縁の眼鏡を外して窓枠に置く。
月が眼鏡のレンズに丸く映り込んで綺麗に輝いた。

(疲れて寝ちゃったって言えばいいかな…。)
心の中で愁にごめんねと呟くと、祐弥の腕が私を捕まえた。

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