疲れた時には、年下の犬系男子が愛でたくなる

・作

雨の日に出会った、出張ホストの理人(りと)とデザイナーの祥(さち)。元整体師の理人にオイルマッサージをされて…。身も心もほぐしてくれる素敵なセラピストと出会いたい、お疲れモードのお姉様たちに贈ります。

スーパーを出たら、言葉を失うくらい酷い雨が降っていた。
大きな買い物袋を両手に持って、傘を首でおさえて。

「…5分くらいだし、頑張ろう!」
そう自分に言い聞かせて足を踏み出したものの。
1分歩いてスグに後悔した。

傘の意味がない位ずぶ濡れ。
(帰ったら、シャワーを浴びないとなぁ。)

そう思いながら歩いていると。
突然後ろから声を掛けられた。

「…おねーさん!おねーさん!それじゃ傘持てないでしょ?1つ貸して」
振り向くと、大きな黒い傘をさした男の子が立っていた。

「えっ?」
「ほら、良いから。風邪ひいちゃうよ!」
「でも…」
「こんな雨の中歩くってことは近いんでしょ?送るよ」
戸惑いつつも背に腹は代えられない。

「じゃぁ…」
ビニール袋を差し出すと、彼は受け取って歩き出した。

「何処に行けばいい?」
「あっ、あのレンガのマンションなの」
「OK!急ごう」

エントランスに着くと、彼も私もビッショリ。

「ありがとうね。助かったわ」
「おねーさん雨なのに凄いガッツだよねぇ」
「忙しいから1週間分買いだめしてるのよ」
「あっそうなんだ。俺てっきり子持ちのママさんかと」
ナンパとかじゃなく、本当に親切で荷物を持ってくれたらしい。

(本当に良い人なんだなぁ…。)
男の子をまじまじと見る。
黒縁の眼鏡に、アッシュグレイの綺麗な髪。
整った顔立ちに思わずドキッとした。

「確かにこの量は、独身には見えないけど」
「ごめんごめん。後ろ姿だったし顔が見えなくてさ」
「それにしても濡れちゃったね…雨が落ち着くまでお茶飲んでく?」
「良いの?」
「うん。荷物持ってくれたお礼にね」

自分でも驚くほどスムーズに、私は彼を部屋に受け入れた。

(私のせいで濡れちゃったのに、このまま帰すのは悪いよね。)
と、心の中で言い訳しながら。

「お邪魔しま…あぁ靴下までビッショリだぁ」
「あっ洗濯しちゃう?乾燥機あるし。ついでにシャワー浴びたら?」
「えっ、良いの?」
「うん。大きめのTシャツあったかな…ちょっと探してくる」
「助かる!ありがと!」

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