今宵、背徳を抱いて
入社数ヶ月の結衣は尊敬していた上司への想いを抑えきれず理性の境界を越えてしまう。触れた指先に宿るのは背徳の熱それはもう、恋では終われない――
入社して数ヶ月が過ぎた。
今夜は、部署全体で進めてきたプロジェクトの最終段階。
確認作業のため、私と上司の藤原さんだけが残っていた。
蛍光灯の下、藤原さんがパソコンに向かう姿を見つめる。
真剣な表情も、静かな指の動きも、何度も見てきたはずなのに――
どうしてだろう。今日は、その全部が少し違って見えた。
いつからこんなに、この人を目で追うようになったんだろう。
ずっと尊敬していたのに、
気づけばその尊敬の奥に、もっと深いものが混じっている。
そう思った瞬間、胸の奥がふっと熱を持った。
書類を手に立ち上がる。
ただの確認なのに、彼のところへ行くのが少し怖い。
でも、それ以上に――嬉しい。
「……確認お願いします」
顔を上げた藤原さんの目が、まっすぐ私をとらえる。
その視線だけで、心臓の音が耳の奥まで響いた。
書類を差し出す手が、わずかに震える。
彼が受け取る瞬間、指先が触れた。
その短い時間が、やけに長く感じる。
離れたくない――そんな気持ちが、指先に宿った。
彼の指が私の上に残る。
離れるはずのその瞬間、私は手を引かなかった。
理由なんてなかった。
ただ、そうしたかった。
指先から伝わる体温が、頭の奥まで響いてくる。
見上げた視線の先で、藤原さんが静かに息を吸う。
言葉はないのに、何かが確かに動いた。
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