今宵、背徳を抱いて (Page 2)
気づけば、彼の胸に身を寄せていた。
腰に手を回した瞬間、全身がその温度に包まれる。
驚くほど静かなのに、藤原さんの鼓動だけがはっきりと伝わってきた。
ドクン、ドクン――その音が、私の胸の奥と重なっていく。
どちらの音か分からないほど近くて、息が浅くなる。
藤原さんも、少しだけ息を乱していた。
何か言わなきゃと思っても、喉が動かない。
頭では止めようとしているのに、体が勝手に動く。
胸の奥で鳴っているのは理性じゃなくて、ただの衝動だった。
藤原さんの胸に顔を預けたまま、しばらく動けなかった。
耳に響く鼓動が、私のものより少しだけ早い。
それに気づいた瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
藤原さんの手が、そっと私の背に触れる。
強くも優しくもない、ただ確かに「そこにある」温度だった。
逃げようと思えば逃げられたのに、そんな気にはならなかった。
「……結衣…さん…」
名前を呼ばれただけで、息が詰まる。
その声が、体の奥まで落ちていくみたいで。
見上げた視線の先で、藤原さんが少しだけ眉を寄せた。
理性と迷いが交錯する、あの真面目な目。
それでも彼は、私を突き放さなかった。それどころか2人の距離が溶けるように重なる。
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