野良犬が忠犬になりまして

・作

いわゆる限界社畜と言われるブラック企業に勤めている里穂は、ある日酷く酔っ払ってゴミ捨て場に倒れていた金髪の青年、隼人を連れ帰ってきてしまう。暫く生活を共にし、忠犬のように懐いた隼人と、ついに一線を超えてしまうことになる。

彼と出会ったのは、数ヶ月前のこと。
その日は、朝一で長年付き合った彼氏に振られ、会社の嫌な上司には散々理不尽にいびられ、ストッキングも派手に伝線する最悪な一日だった。

自棄になって、1人居酒屋で飲んだくれて夜風を浴びながら帰路についていると、少しずつ頭が冷めて何もかもが嫌に…どうでもよくなってしまった。
そんな時、マンションの近くのゴミ捨て場に捨てられた人間が。

「……ヤンキーが捨てられてる…」

そこに捨てられていた人間は、脳天に少し地毛の黒が出てきてしまっている金髪。
両耳にはたくさんのピアス、眉毛や唇にもシルバーのピアスが街灯に照らされ輝いていた。

今までの人生でヤンキーとの関わりがなく、彼は私の中のヤンキーの勝手なイメージにピッタリだった。
そして、傍らには相棒のように佇むギター。

「バンドマンかな…」

自暴自棄になっていた私は、何か刺激が欲しかったのだと思う。
あろうことか、ギターを背負い彼を懸命に引きずって自宅まで連れて帰ってしまったのだ。

最初は当然、野良犬のごとく警戒されたけれど、ご飯や寝床を与え、お風呂も貸して…と世話をしていたら、いつの間にか懐かれてしまった。

*****

「里穂さん!里穂さん!目ぇ開けて寝てんの?」

「っ、わ!な、なんでもないよ!」

「飯、冷めちまうから早く食っちゃって」

「そ、そうだね!いただきまーす!」

最初はこちらを睨んでいた野良犬も、今は進んで家事をやってくれる忠犬に成長した。
私の忠犬……隼人はバンドをやっていて、まだインディーズなのでバイトをしている。

彼も忙しいはずなのに、それでも更に多忙を極めている社畜OLである私の世話を甲斐甲斐しくしてくれて…年下には興味が無かったのに、最近では惹かれ始めているしまつ。

振られて出来た心の穴を、彼が埋めて満たしてくれて…好きにならずにはいられなかった。

彼も、割と分かりやすく好意を示してくれていて…それでも、年上の矜持から彼をペット扱いしてしまう。

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