トップアイドルと秘密の逢瀬

・作

私の彼は、今をときめくトップアイドル。もちろん世間に私の存在は、絶対にバレてはいけない。本当の彼の姿を知っているのは私だけ。彼の夜の顔を知っているのは、私だけ…。

仕事を定時で終えた私は足早に帰宅する。
軽くシャワーを浴び、身なりを整え、レースのワンピースに袖を通し、未だに慣れないヒールを履いて再び家を出る。

そして着いた先は、身の丈に合わないほどきらびやかなホテル。

フロントで4ケタの数字を書いたメモをうつむきながら黙って差し出すと、同じ数字の書かれたカードキーを渡された。

カードキーを頼りに部屋へ向かう。
ガラス張りのエレベーターからは、街の夜景が一望できた。

ほんと、身の丈に合わない限りだ。

着いた部屋は恐らくスイートルームだろう。
ホテルなのに部屋がたくさんある!と最初はとても驚いたものだ。

ソファへ腰を下ろし、ふぅと大きく息を吐く。
毎度のことながら、ここまで来るだけでどっと疲れてしまう。

自宅のものより遥かに大きなテレビをつけると、そこには今をときめくイケメンアイドル、RENが新曲を披露していた。

来月からはこの新曲を引っさげてのツアーが始まるそう。
甘いマスクとクールな立ち居振る舞いが、彼の人気のポイントらしい。

画面越しのRENはとてもキラキラ輝いていて、さっきまでデスクで伝票処理をしていた私との違いを痛感する。

そのまましばらくソファでぼんやりしていると、部屋のチャイムが鳴った。

ドアスコープを覗くと、そこにはキャップを深々と被る見慣れた男の姿があった。

私は慎重にドアを開け、男を部屋に招き入れる。

 

バタン。カチャ。

 

ドアを施錠したことを確認すると、

「菜々ぁ、会いたかったよぉ」

ガバッと強く抱き締められた。

「はいはい、今日もお疲れ様でした!廉…」

そう言って背中に腕を回し、トントンと優しくたたいて慰めてやる。

そう、今私はあのイケメンアイドル、RENの腕の中にいるのだ。

 

―――

 

廉は私の高校の同級生で、当時は細々とモデル活動をしていた。

私は、彼の仕事と学業との両立に奮闘する姿を見て、応援しているうちに自然と仲を深めていった。

次第に人気も仕事も増えていく廉の姿を間近で見ながら、私は廉が遠い存在になっていくのを寂しく感じていた。

 

しかし、廉は私を手放すことはしなかった。

 

大人気アイドルにまで上り詰めた今でも、こうして私との時間を作ってくれる。

まぁ、これには廉のマネージャーの協力があってこそなのだけど。

だから今もこうして、私はあの頃と変わらず廉の腕の中にいられるというわけだ。

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