金で男を買う女

・作

過去のトラウマからセックスができなくなってしまった、れいな。かといって性欲がないわけではない。一念発起して女性用風俗店の門を叩くが、そこに待ち受けていたのは想像を絶する快楽の連続だった。極上の快楽が忘れられない、れいなのその後とは…?

今日は彼と初めてのお泊まりコース。
温泉に1泊2日。
さて、いくらかかるのかしら…なんてね。

まぁ、そんな野暮なことは考えないで、思いっきり楽しもう。

「ごめん、お待たせ。行こっか!」

時間ピッタリに到着した彼に切符を手渡し、代わりに腕を組んで改札を通る。

さぁ、夢の時間の始まり…。

 

―――

 

遡ること半年。

私はスマホ画面を見つめるだけで、ボタンを押す勇気が出せない。
どれだけ時間が経っただろうか。

女性専用マッサージ店。
所謂、女性用の風俗店。

私が見ているのは、まさにそれで。

3時間で約3万円。
プラス、交通費にホテル代、指名料等々。
決して、出せない額ではない。

意を決してメールフォームに進む。
個別の指名がなければ、年齢やタイプを入力すると、最適の相手を選んでくれるらしい。

緊張で震える指。
『紳士的』『20代後半』『細マッチョ』で申し込み完了。

すぐに返信メールが鳴って驚いた。
しかしそれはとても業務的な、当日の打ち合わせメールだった。
待ち合わせの場所と時間、目印となる服装やアイテムについてなどについて、書かれている。

あんなに緊張していたのに、淡々と進んでいく打ち合わせ…少し頭が冷えてくる。

…が、もう決めたことなのだ。
私も、いつまでも立ち止まってはいられない…。

 

待ち合わせの当日、午後2時。
今日は平日だが有休を取った。
知り合いに会うリスクを減らしたかったから。

ホテル街近くの、コンビニの外。
『キャップを被り、アイスコーヒーを飲んでます』
と伝えてある。

遠くから、黒いジャケットを着た、スリムな男性が歩いてくるのが見えた。

あの人かもしれない…。

そう思ったら急に顔が熱くなって、胸の鼓動が加速する。
始まるのだ、これから。
自分で決めたことなのに、往生際が悪いことこの上ない。

「れいなさんですか?初めまして、コウキです」

「はじめまして…」

私は俯いて、蚊の鳴くような返事をするので精一杯だった。

「行きましょうか、ゆっくりでいいので」

彼…コウキさんは、私の緊張を汲み取って歩み寄ってくれた。

「手、繋いでもいいですか?」

「あっ…、はい…」

真っ赤でカチコチになった私の手を引いて、指定のホテルへ向かっていく。

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