憧れの執事様との念願初えっちはねちっこかった (Page 3)

母の助言から、聖人に本気が伝わらないのは、私に失うものがないからだと気づいた。

となれば、差し出せるものは何でも使う。

決死の覚悟で私がそういうと、母はあっさりと妙案を繰り出してきた。

「手っ取り早いのはお見合いかしらね」

「お見合い!?」

「そう、そもそもあんた達延長戦ばっかりだから何も進展しないのよ。何か変化を、そしてあんたの本気を見せるってなったら一番手っ取り早いでしょ」

「それはそうだけど…」

これまで、聖人以外眼中になかった私にとって、かなり抵抗のある話だ。

しかし、だからこそ意味も効果もあるのだと母は強くいった。

「今回ダメでもまた次が、なんて思ってるからダメなのよ。交渉術は“ここで手に入れなければ手に入らない”と思わせるのが鍵なの。それに、どうせ失恋したら次の恋で癒やすのが一番なんだから一石二鳥よ」

「二鳥を得たらそれすなわち失恋じゃない!」

「あらやだ、こういうのは保険っていうのよ」

元華族のお嬢様のくせに、母は商人らしくああいえばこういう。

おまけに、決行するなら決意が固まった今すぐといわれ、内心心臓が口から出そうだった。

かくして、賭けの結果はといえば。

*****

夜半を過ぎた頃、ベッドでうたた寝をしていると、しゅるりと胸元のリボンが弄くられる感触がした。

うっすらと瞳を開けると、月光を背負った聖人がベッドに腰掛けて私を見下ろしていた。

「待っていて、くれたんじゃないんですか?」

「だって、遅いから…」

聖人の手が、夕方から緊張で冷えたままだった私の頬を優しく撫ぜる。

その手に擦り寄り、自分の手を重ねた。

刹那、涙があふれる。

「ごめんね、聖人…」

「何がです?」

「試すようなことして…」

聖人は私を“雇用主”の“お嬢様”として扱う。

しかし、その視線の中にいつしか私と同じものが混ざっていることに、ちゃんと気づいていた。

私が十六歳になったとき、かなり本気で迫ったことがある。

泣きながら抱いてくれって頼んだことが。

そのとき、聖人は確かに「待っていてほしい」っていったのに。

今回の件は、待てなくなった私の暴挙だ。

「いいんですよ。随分お待たせしてしまったのは私なので」

「だったら」

敬語はやめて。

泣きながら私がねだると、聖人は溶けるように微笑んだ。

「好きだよ、月乃ちゃん。僕もずっと好きだった。君の大切なもの、もらってもいい?」

「遅いよ! ばか!」

叫んで私は自分から彼をベッドへと引き込んだ。

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