私の甘やかし上手でえっちな足長おじさま

・作

カフェで知り合った年上の男性・夜竜正(よるたつまさ)と恋に落ちた、上月(こうづき)ひふみ。四十代の竜正と、二十代の自分との間に隔たる、歳の差やらスペックの違いで凹むことも多いが、実は何より凹むのはセックス事情。何せこの紳士然としたオジ様、甘やかし上手かつ、見かけによらず性欲旺盛な男で…!?

私の好きな人には謎が多い。

「えー? 至って普通の男だよ、私は」

彼はよくそう言って笑う。

笑い皺のある目元を、優しく細めて。

笑い皺以外にも、彼の顔には細かい小皺がいくつも刻まれている。何せ彼は、私よりも二回り以上も年上だからだ。

夜竜正(よるたつまさ)さん、御年四十六歳。私よりも私のお父さんのほうが年が近い。

しかし、中年太りが気になるうちのお父さんと違って、彼のお腹は私も羨ましくなるくらいすっきりとしている。おまけに香水なのか、いつもお香のような、上品ないい匂いがする人だ。

身なりもシャツにスラックスばかりのくせに、シュッとしていて決まってる。

彼はいつだって悠々と自宅マンションにいるが、定年にはまだ早いはずで――

「じゃあ、仕事は?」

「不労所得ってやつだよ。亡くなった親が不動産をいくつか持っていたから、それを相続してね。おかげでつましく暮らせば、食べるには困らないんだ」

嘘、前は研究者をしていたと知っている。何故知っているのかというと、それは私がデザイナーだからだ。

竜正さんの本は、制作物の見本としてうちの会社の本棚に置かれている。ここ最近は本を出していないようだが、上司に聞いたら、彼は自費出版なんかで本を出すとき、必ずうちに頼んでくれるらしい。

「ご趣味は?」

「読書。知ってるくせに」

しょうがないな、といった様子で眉尻を下げる竜正さんは今、私をソファの上に組み敷いている。

普段は枯れてさえ見えるくせに、こういうときばっかり男の色気を出してくるからずるい。

「さっきからどうしたの? お見合い臭い質問までして」

「…じゃあ、最後の質問。この状況は?」

「そりゃあ、君とイイコトしたいなと思いまして」

「おじさん臭いなぁ」

「おじさんですから」

いたずらっぽく口角を上げた彼を、私もわずかに唇を開いて誘う。待っていられなくて、両手で竜正さんの頬を挟み、私から引き寄せた。

「えっちな誘い方を覚えちゃって」

「教えたのは竜正さんのくせに」

ふふっと気配だけで笑った竜正さんの唇が、覆いかぶさるようにして私の唇を塞いだ。

まるで一対の貝の殻みたいにぴったりと合わさった唇で、お互いの舌を絡め合う。

絡め合うといっても、竜正さんは舌が長いので、私の舌はすぐに絡め取られ、口の中は彼の舌と唾液ですぐにいっぱいになってしまうのだが。

「んっ…ふ、ぁ…」

「ひふみちゃん、飲んで…」

口の端から溢れるほどになった二人分の唾液を飲むと、ぞくりと全身が泡立った。

きっと、媚薬というものを飲んだら、こんな感じになるのだろう。

竜正さんの手は、もうすでに私のシャツを捲って、お腹を撫でていた。

「ここでいい?」

竜正さんの問いに、私はこくんと黙って頷いた。

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