無愛想彼氏の過激な愛情表現

・作

おっとり系女子大学生・藤峰由木(ふじみねゆき)の彼氏は、同じ大学に通う由木とは正反対の、無愛想なツンデレ男子。不機嫌そうな彼しか知らない周囲は「別れちゃえば?」といってくるが、デレた彼とのエッチは由木にとって至福の時間だった。不器用な態度で器用に触れてくる手は、何度も由木を優しく激しく追い詰めて…?

剣呑(けんのん)な顔をした友達二人に大学の食堂に連れ込まれたのは、秋迫る過ごしやすいある日のことだった。

私は空きコマだが、三限が授業中という時間のせいか、食堂は少しがらんとしている。

友達が選んだのは、普段一番人気である食堂の一番奥かつ端のソファ席だった。

「で、あんたいつ木下(きのした)と別れんのよ」

隣に座る友達のサキが、睨むような厳しい目つきを私に向けながら口を開いた。

なお、これはイジメではない。

私は手元のパックジュースを啜りながら、首を傾けた。

「んー、今のところ別れる予定はないよ?」

「何いってんのよ!あんた、もっと自分を大事にしなさいって何度あたしにいわせる気!?あんな無愛想な性悪男とっとと捨てなさいよ!」

「まあまあ、サキ落ち着いて…」

もう一人の友達が宥めようとするが、サキの怒りはヒートアップしていく。

「これが落ち着いていられる!?かわいい!彼女が!声かけたってのに!あの男ときたら悪態ついてきやがったのよ!?あたしのかわいい由木を奪っておきながら~!」

がばりとサキに抱きつかれる。

ちなみにサキが怒っているのは、ついさっきの出来事についてだ。

二限が終わるなり、気になることがあって図書館棟へ向かった私は、そのまま昼休みの時間も丸々使って調べごとをしていた。

私は自他ともに認めるほどトロいので、混雑する昼休みの食堂を避けて本館に戻ってきたところで、自分の彼氏である木下一路(いちろ)くんと鉢合わせしたのである。

そこにサキ達もたまたま居合わせたのだが――一路くんはといえば私の顔を見るなり「今さらメシ?ほんとにトロいな」とニコリともせずにいい放ったのだった。

購買で買ったサンドイッチをつまみながら、私はサキの怒りが静まるのを待つ。

「そもそも木下、口が悪すぎんのよ。この前だってサークルの後輩泣かせてたみたいだし」

「まあ、確かにねぇ。本当になんで由木、木下なんかと付き合ってんの?確かに顔はいいほうだけど、あいつ性格きっついじゃん。どっちから告ったんだっけ?」

「んー、どっちからっていうか…成り行き?」

「何ソレ!じゃあ、あんたアイツに好きともいわれてないわけ!?」

サキが立ち上がらんばかりの勢いで怒鳴るが、常に学生が大騒ぎをしている場所のせいか、誰も気に留めない。

それをいいことに、サキは騒ぎっぱなしだ。

何か誤解があるようだけど…――。

「そんなこともないよ?一路くん優しいし」

「ほんっとに由木はおっとりしてんだから…いい?嫌なことははっきり嫌っていうのよ!?」

サキに肩を揺さぶられるが、私は一路くんに嫌なことをされたことはない。

むしろ、本当の彼は優しすぎるくらいで――。

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