無愛想彼氏の過激な愛情表現 (Page 2)

一路くんと付き合い始めたきっかけは、本当に成り行きといえば成り行きだった。

同じゼミだったけど、一路くんは無愛想ながらも女の子に人気があって、私はそんな彼と時々話すくらいで、まさか自分が彼の選択肢に入ってるとは思っていなかった。

「藤峰、ほんとトロいよな」

「あ、ありがとう木下くん」

会話のほとんどはこんな調子で、でも彼の何気ない優しさに救われたことは何度もあった。

何気なく見ていれば、木下くん――一路くんが誰にでも優しい人だということはすぐにわかったし、てっきり私の片思いで終わると思ってたんだけど…。

彼も私を見ていてくれた、と思い知らされたのは、ゼミ合宿のある日、不意にキスされたからである。

あまりにも予想外で、びっくりしすぎてしまった私は、唇が離れるなり思わず「私達って、キスするような関係だったっけ?」と一路くんに聞いてしまった。

「そうなりたいっていったら、どうする?」

うっかり皮肉みたいになってしまった私の失言に、一路くんは声だけは平坦に聞き返してきた。

しかし、彼にしてみればそれが最大の告白文句だったわけで、恐る恐る見上げた一路くんの顔は可哀想なくらいに真っ赤になっていた。

普段、誰に対してもそっけなくて、何があっても何をいわれても顔色一つ変えない彼のそんな顔を見て、つい「嬉しい」っていってしまったのが、お付き合いのきっかけだったりする。

*****

「いらっしゃい、一路くん」

玄関先へ向かうと、思ったとおり一路くんがバツの悪そうな顔で立っていた。

あれから一路くんとは学内で会うことも、連絡がくることもなかったが、なんとなく今日彼が私の部屋に来ることはわかっていたので、こちらも準備は万全である。

「ごはん、食べてくでしょう?今日はシチューを作ってて…」

一路くんが靴を脱ぐのを見届け、キッチンに戻ろうと踵(きびす)を返すと、不意に後ろからぎゅうっと抱き締められた。

背の高い一路くんが身をかがめてまで、私の首筋に頭を擦り付けるので、少しくすぐったい。

「なぁに?」

「…別に」

そうはいいつつ、一路くんは私を抱き締める力を強める。

お鍋の火を止めておいて、よかった。

私は、一路くんの腕を軽く叩いて「ちょっと緩めて」とお願いした。

「ん」

不服そうな声が返ってくるなり少しだけ力は緩められ、私は一路くんの腕の中でくるりと方向転換する。

彼の顔を見上げてにこりと笑うと、一路くんは一瞬不機嫌そうに眉間にしわを寄せたが、私は知っている。これは照れたときの顔だ。

こんなに可愛い彼を、私だけが知っているのだ。

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