背後に立つ都市伝説【さとるくん】に、エッチできるか聞いてみた
呼び出せばどんな質問でも答えてくれる、都市伝説上の存在【さとるくん】。すぐ後ろで「何を聞きたい?」と声がしても、決して振り返ってはいけない。長い年月をかけて性癖を拗らせた私は、背後に迫ったさとるくんに質問する。「エッチなことってできますか…!?」
【さとるくん】の都市伝説。
呼び出すと「今、〇〇にいるよ」という電話とともに、さとるくんが徐々に迫ってくる。
背後までたどり着くと、どんな質問にでも正確に答えてくれるという。
しかし、質問をしなかったり、振り返ったりしてはいけない。
それを破ると、さとるくんに連れていかれてしまう——という話。
その都市伝説を知った当時、幼かった私はさとるくんを呼び出すために必要な携帯電話をまだ持っていなかった。
そのまま忘れてしまっていたけど、最近になってなぜかふと思い出した。
スマホになってしまったけど、今ならできる、と急に思い立ったのだ。
手順を踏むと、電源を切っているはずの携帯電話に24時間以内に着信が入る。
…らしいけど。
実行してから早23時間が経過し、今に至る。
「やっぱり、無駄か…」
ベッドに寝転がりながら、昨日から電源を切ったきりのスマホを見つめる。
そんな存在いるはずない。
想像の中でひっそりと楽しむしかない。
頭では理解しつつ、24時間経つまではとスマホを握りしめながらうとうとしていると——
「えっ」
手の中でスマホが震え、軽快な着信音を奏でた。
重くなっていた瞼が一気に覚醒し、心臓の鼓動が速まる。
——まさか、本当に?
震える指で画面に触れ、電話に出る。
「はい…」
風のようなノイズのような音の奥に、くぐもった無機質な声が聞こえた。
『さとるだよ』
息を飲む。
きた、本当に。
『今、公民館の前にいるよ』
ぷつ、と通話が切れた。
やばい。
くる。
「うそ…!」
さとるくんがここに向かっている今、できることは——
「…シャワー浴びよっ!」
いつでも着信に気付けるようにスマホをジップバッグに入れて、足早に浴室へと向かった。
*****
私は昔から、おばけに会いたかった。
こっくりさんもひとりかくれんぼも、有名な降霊術はあらかた試したけど、成果はゼロ。
霊感があるわけでもない。
それでも、「もしかして」という期待をいつまでも捨てきれずにいた。
きっかけは、小学生のころの怪談ブームだったと思う。
そのときは「おばけと友達になってみたいなあ」なんて純粋な気持ちを持っていた。
ありがちな怖い話にキャーキャー騒いだ次の朝、「本当におばけが出たよ!」と興奮気味に報告するクラスメイトを横目に肩を落としたものだ。
「どうして私のところには来ないんだろう」と。
今思えば、そのクラスメイトの話が本当かも疑わしい。
だけど、私は心から羨ましくて、おばけに会いたくて、おばけに憧れて——
不意に耳元で低くか細い声がしたら?
生気のない冷たい指で肌に触れられたら?
恐怖で抗えないまま、組み敷かれてしまったら?
そんな都合のよすぎる妄想が長い年月をかけて膨らみ、大人になった今では見事に性癖が捻じ曲がっている。
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