背後に立つ都市伝説【さとるくん】に、エッチできるか聞いてみた (Page 2)
それから、何度もさとるくんから着信があった。
『今、公園にいる』
『今、図書館の前にいる』
『今、君の家の前にいる』
さとるくんが近づいてくるのと同時に、私の心拍も高まった。
多分、普通の人とは違う意味で。
『今、玄関にいる』
振り返ってはいけないさとるくんと顔を合わせるわけもないのに、前髪を手ぐしで直す。
ベッドを目の前に、部屋の扉を背にして立つ。
下着はお気に入りのものを上下揃えた。
フローラルの香りのヘアオイルもつけた。
シャワー中にムダ毛の最終確認も終わった。
準備は万端だ。
そして、最後の着信で——ついにそのときがきた。
『さとるだよ。今、君の後ろにいる』
スマホからの音声が背後からも重なって聞こえ、通話は切れた。
そして、右の耳元で——
「何を聞きたい?」
——さとるくんの声。
待ちに待っていた、「おばけ」という存在が、すぐそばに。
私は震える声で、しかし間髪入れずに質問した。
「エッチなことってできますか…!?」
「…ん?」
「エッ…エッチなことってしてもらえますか…?」
しん、と部屋の空気が固まる。
「…質問の意味がわからないんだけど…」
背後から聞こえるさとるくんの声は明らかに戸惑っている。
「あ、まって!これ『できません』って答えられたら終わるやつだ。どうしよう…」
はっとして口元を抑える。
さとるくん、せっかく呼び出せたのにこれだけで帰っちゃうかもしれない…!
「…どうしようとか言われても、こっちのセリフなんだけど…」
さとるくん、意外と会話してくれて嬉しい。
というか、すぐ後ろにさとるくんがいるの、ヤバい。
耳の裏に息がかかって、ぞわぞわと鳥肌が立つ。
「…勘違いしてるみたいだから教えておくけど、僕が答えるのは未来のこととか過去のこととか…そういうのなんだよね」
「…エッチなやつはナシ?」
「ナシ。だから仕切り直そう」
帰らずに仕切り直してくれるらしい。優しい。
「じゃ…10分後の私とさとるくんはどうなってますか?」
「…なにそれ」
さとるくんが呆れたようにため息を吐く。
「まあいいや、僕もこんなに早く帰りたいのは初めてだから、サクッと見るね」
「あ、うん、ごめんね」
そうか、オバケも元は人間なんだから慎まないと。
勢いに任せて直球のセクハラ発言をしてしまったことが急に恥ずかしい。
「わっ」
反省していると、背後でさとるくんが声を上げた。
「えっなに?」
「いやあの…」
姿は見えないけど、なんだか動揺した様子で口ごもっている。
「なにが見えたのか、教えて?」
さとるくんはしばらく沈黙した後、観念したように小さな声で答えた。
「…してる」
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