窓際のアルストロメリア (Page 2)

時刻は18時半を過ぎていた。

待ち合わせをした男性は、スーツ姿で、写真よりも少し若く見えた。

私を写真よりも全然綺麗、と褒めちぎり、手慣れたように予約していたレストランまでエスコートをしてくれた。

美味しい料理とお酒を呑んだこともあってか、心もほぐれ、私は少しずつ自分から話をしていた。

自分の趣味の話や仕事の話など、取り止めのない会話をいつも以上に饒舌に話していた。

だが、彼は、ただうなずきながら話を聞いている。その様子を見ると、あまり興味がないようにも見受けられる。

早く食事を済ませてほしいのか、しきりに時計を見ては、私を急かす。

あぁ、またか。その様子を見て、私の心は冷めきっていた。

 

食事が終わると、彼は当たり前のように、ホテルに私を連れ込んだ。

彼がシャワーに入っているのを待っている間、私はカバンの横のアルストロメリアの花束を見ていた。

昼間にその花を説明する野田の声が、頭の中で蘇る。

私は、少し心臓の鼓動が早くなるのを感じた。

シャワーから浴びた彼は、私に覆いかぶさり、キスをした。

特段何か気になる匂いがしたわけではないのに、なぜか急に嫌悪感がわき、私は必死にキスが終わるのを待った。

彼は私の顔を見て、可愛い、綺麗だ、興奮するよ、と何度も感想を述べた。

そして、セックス、というよりは、私の体という器を使った射精という行為をしたのだ。

彼は、果てる時に、何度も私の名前を呼び、そして好きだ、と口にした。

「ねぇ、わたしの、どこが好きなの?」

ピロートークをしている時に彼にそう問いかけると、挙げられた点はすべて外見についてのことばかりだった。

自分に対する嫌悪感がお酒の酔いと一緒にこみ上げてきて、私は涙を堪えた。

そして、私は彼がシャワーを浴びている間に着替え、荷物を持ってタクシーに乗り込んだ。

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