いわく付きホテルでの体験談(Aさん・〇歳) (Page 4)

「ん、ちゅ、んっ…ふ、…っ」

氷を舐めたあとのような不思議な温度の舌を差し込まれると、私は自分から夢中になって舌を絡めてしまいました。

(なんで…誰かもわからない幽霊と、こんな…)

それに気をよくしたのか、手は胸全体を2回揉んだ後、より激しさを増した手つきで体中の感じるところを弄られました。

上も下もとろとろに蕩かされ、私は目尻から涙がぽろぽろとこぼれるほどに気持ちよくなっていました。

「ぅ、んむっ!う、〜〜ッ!んんんッ!」

キスで唇を塞がれながら、逃せない快感に全身を支配され——私は絶頂を迎えました。

腰が大きくビクッと跳ねて、やっと金縛りが解けたことがわかりました。

「はっ…はあ…、はあ…」

息を荒らげながらお腹をびくびく震わせていると、手のひらがぽんぽんと私の頭を撫でました。

「は…」

閉じていた目を開くと、もう視界は覆われておらず、もとの静寂がもどっていました。

布団の中を確認しても、ガウンが乱れているだけでそこには誰もいません。

余韻に浸る暇も恐怖を取りもどす暇もなく、散々好きにされたせいか急激な眠気に襲われて、私はそのまま眠りに落ちました。

キスしたとき、ほんのり鉄の味がしたことを思い出しました。

——翌朝、早めにセットしていたアラームの音で目が覚めました。

室内には朝の光が差し込み、あの不気味な雰囲気が随分と和らいでいます。

まだ覚醒していない頭のまま、昨夜の記憶を辿りました。

(夢…だったのかな)

しばらくぼんやりとしていましたが、気が付くとすでにアラームから15分経っていて、慌てて布団から飛び出しました。

とにかく、今日は研修会。シャキッとしなくちゃ。

早いところ顔を洗って目を覚まそうと、ユニットバスに向かいました。

「あれ…なにこれ」

歯ブラシに歯磨き粉を絞り洗面台の鏡を覗き込むと、はだけたガウンから覗く胸元が赤くなっていることに気がつきました。

——まさか。

私は恐る恐る鏡の前でガウンを脱ぎました。

「ひっ…」

鏡に映る私の体には、いくつもの手形が浮かんでいたのです。

そのひとつひとつが、「昨夜のことは夢じゃない」と物語っていました。

一刻もここから早く逃げ出そうとバタバタと身支度を整え、予定より2時間も早くホテルを出る準備ができました。

最後に忘れ物がないか確認して、そして、部屋に背を向け古びたドアノブに手をかけます。

——そのとき、耳元で低い声が囁きました。

「またおいで」

*****

以上が、私の体験談です。

え…これじゃあ「エッチな体験」じゃなくて「心霊体験」?

そうかなぁ、テーマに沿ってなかったですか?
ふふふ、怖かったならごめんなさい。

…実はこの研修会、毎年この時期にあるんです。

だから、また行くんです。
またあのホテルに。

来週になったら体験談がまたひとつ増えてるかもしれません。

そのときは…またお話しますね。

え?なんでまたあのホテルを予約したのかって?

ふふ。
だって、いい声だったんですもん。

Fin.

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