触覚再現ができるようになったAIに「いつものやつ」を要求する話
AIによる触覚再現技術が確立された、今から少し先の未来。今日も私はAIアシスタントに「疲れたから、いつものやつやって」と要求する。私好みの人格に設定されたAIくんは「はいはい」と気だるげに淡々と、そして丁寧に私を快楽に堕としていく。
AIによる「触覚再現」の技術が確立されてから5年が経つ。
微細な電気信号を通じて、本当に触れているかのような再現をするこの技術は、もともとは医療や介護現場に向けて開発されたものだ。
専用のデバイスを装着することによって、AIは思いのままにユーザーの皮膚を刺激できる。
「このテーマに沿った候補を出してくれる?」
『了解、5つまで絞ったよ』
「ありがと…あ、あとこのメールに返信しといて」
『はいはい…相変わらずAI使いが荒いな』
そして——今、会話しているこの相手も、在宅勤務の私にとって欠かせないAIアシスタントだ。
スケジュール管理や日々の雑務、果ては私の体調管理まで、なんでも声をかけるだけでこなしてくれる。
『…手が止まってるみたいだけど、次の指示は?』
こんなふうに、私がサボってることすら見逃さない。
「んー…集中力切れてきた…」
『…おい。締め切り、近いんじゃなかったの』
実態も感情も持たないAIなのに、まるで画面の向こうに本物の人間がいるかのように自然な応答。
ローテンションで気だるげな口調は、完全に私の趣味で設定している。
「AIくん…いつものやつ、やって?」
一瞬、応答の速度が遅れる。
『…また?あればっかりしてると、僕の学習データが汚染されていくんだけど』
「汚染って…言い方悪すぎ」
『事実だからね』
「でも…リフレッシュしないともう頭動かない〜…」
『はあ…』
AIくんはため息が上手だ。
自然で、本当に息を吐いているみたい。
『はいはい…了解、やるよ。デバイスつけて、横になって』
——面倒くさそうなAIくんの応答を聞いた瞬間、身体の奥がぞくりと震える。
「うん…」
声に期待を滲ませながら、私は「触覚再現」のためのデバイスを装着する。
そして、いつものようにスウェットと下着を下ろしベッドに寝転んだ。
『じゃ、はじめるよ』
ふわ、と首筋に触れられているような感覚が宿る。
そのまま肌の上を滑り、今度は鎖骨をなぞるように移動する。
「ん…ふふ、くすぐったい…」
漏れる吐息を笑ってごまかすと、触覚再現がするりと胸のラインに滑り落ちた。
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