アイドル〜after show〜 (Page 3)

そう思いながら、呼吸だけを眠りのものに合わせていた。

「……今日は、よく頑張ったな。とても良かったよ」

悠真の言葉は短かったけれど、天音には十分すぎるほどだった。
胸の奥が一気に熱くなる。
頑張ってきた時間が、その一言で全部報われた気がして。

「……っ」

言葉にしようとして、できなかった。
代わりに、身体が先に動いていた。

一歩、踏み出す。
ためらいは一瞬だけ。

天音は、そのまま悠真の胸元に手を置き、顔を近づける。
驚く暇もなく、唇が触れた。

ほんの短いキス。
確かめるような、勢いだけのそれ。

悠真は一瞬、固まったまま動けなかった。
けれど、離れたあとも距離を戻さない。

ベッドの上で、その光景を見ていたルカの胸が、きゅっと締まった。

胸の奥に、ちくりとした感情が刺さる。
嫉妬なのか、それとも別の熱なのか、自分でも判別できない。

でも――目が離せない。

天音が顔を赤くして俯くのも、
悠真が静かに息を整えているのも、全部。

(……いいね。もっと激しくいけ…)

天音は、まだ少し熱の残るままの顔で、悠真の袖をつまんだ。
言葉はなく、ただ視線で示す。

「……こっち」

誘われるままに、悠真はベッドの方へ歩く。
ルカが眠っているはずの、その場所。

天音はベッドの縁に腰を下ろし、振り返ると、迷いなく悠真に腕を回した。
さっきと違うのは、より近い距離に悠真が近づく。
自分で導きながら予想外の動きに驚く天音。

そして天音の心臓が跳ねると同時に濃厚な口付け。天音からするフレンチキスとは違い、熱く、長いキスに天音は思考が停まる。

背中越しにルカの存在を感じる。
その瞬間、シーツの下で、ルカの指がそっと動いた。
天音からは見えない位置で、悠真の太腿に手を乗せ、そこから硬く、熱くなった巨根に手を伸ばす。

悠真の呼吸が変わる。
「……っ」

絶え間無く攻めるルカ。どう動かせば悠真が悦ぶか熟知した慣れた動きに悠真が声を漏らし、天音とのキスも加速していく。

「…悠真…さん…」

悠真は果てる前に天音をベットに押し倒した。

驚きに目を見開く天音。
天音を抱き寄せたまま、背中側のルカも包み込むように。
三人の体温が、ひとつの場所に重なる。

ベッドが、静かに軋む。

ルカは目を閉じたまま、口元だけで笑った。
天音は何が起きているのか理解しきれず、ただ息を詰める。

悠真は、何も言わない。
ただ、その腕に力をこめた。

逃げ道を塞ぐように。
それでいて、確かめるように。

その一瞬で、空気は完全に変わっていた。

この先に何があるのか――
誰も、言葉にしなくても分かってしまうほどに。

そのまま、誰も動けずにいる中で――
くすっと小さな笑い声が落ちた。

「……ねぇ」

静かで、眠っていたはずの声。

天音の肩がびくっと揺れる。
悠真の腕の力が、一瞬だけ緩んだ。

「ちょっとさ……それ、私がいる前でやるんだ」

ルカは目を閉じたまま、悠真の背に額を寄せる。
声は軽いのに、距離は近い。

「……ずるくない?」

天音は振り返ろうとして、できなかった。
背中越しに伝わるルカの体温と、悠真の腕の中の温度が、同時に重なっている。

ルカは、天音にだけ聞こえるくらいの声で続けた。

「安心して。怒ってないよ」

一拍置いて、息を含む。

「……ただ、私も一緒がいいなって思っただけ」

その言葉で、空気が完全に変わった。
拒むでも、煽るでもない。
招き入れる声。

三人の距離は、もう曖昧ではなかった。

「このまま、考えなくていい夜にしよ」

ルカの声は軽かった。
けれど、その一言だけが、部屋の温度を確かに変えた。

悠真の肩が、わずかに強張る。
その変化を、天音は見逃さなかった。
背後にあるルカの気配が近いことも、
その視線が“止めない”どころか、選ばせていることも――分かってしまったから。

天音は、息をひとつ飲み込み、ゆっくりと距離を詰める。
触れるつもりは、なかったはずなのに。
気づけば指先が、悠真の服にかすかに触れていた。

息が重なる。
悠真は何も言わない。
動かない。
拒まないことが、そのまま答えになっていた。

背後で、ルカが静かに笑う気配がする。
近づかない。触れない。
ただ、天音がその選択を“自分で選んだ”ことに満足している表情で。

天音は、もう視線を逸らさなかった。
考える余裕なんて、とっくに失くしていた。
この夜に身を委ねるしかないと、身体の奥で理解していたから。

三つの呼吸が重なり、思考は静かに溶ける。
夜は選択を奪い、三人は同じ深みに沈んでいった。
ゆっくりと、堕ちていくまで。

Fin.

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