魅惑の香りに乱される夜 (Page 3)

加賀見さんと来たのは個室風というより完全個室だった。店員さんに確認されたのは、部屋の内観や料理、ドリンクなどの写真を撮ったり、SNSなどにアップしないことだった。部屋に入った瞬間窓一杯にアクアリウム。巨大水槽が目に入った。

「聞いたより壮大。コレ全部屋から見えるんだって。中央に水槽があって周り囲むように部屋があるの。向かいの部屋の窓見えるでしょ。といってもマジックミラーで中見えないけど」

「すごいキレー。こんなところ知りませんでした」

白い壁も同じく白い家具も青く見えた。思ったより手ごろな値段の料理はどれもおいしかった。綺麗な熱帯魚が隣を横切っていく。いつもとは違う非日常感が私の気分を高揚させた。

「ねえ、燈子さん。この前のこと何も覚えてないの?」

「す、すみません。アラームで起きた時にはいなかったので。私、何かご迷惑を…」

「別に迷惑じゃないよ。甘えてきて、キスをした瞬間に寝落ちはさすがに堪えたかな…」

ははと渇いた笑みにサーっと血の気が引く音がした。キスをしたっていうのは確かだけど、甘えてきて…?何をしたんだ本当に。記憶がキレーに飛んでいるからか、だんだん自分が信用ならなくなってきた。どうしても思い出せない。そうない機会だったかもしれないのに。寝落ちって、寝落ちって。

「いいよ、別に。でも、良ければこの前の続きしない?」

はいともいいえとも言えないままの私。なんか言わなければと開きかけた口は加賀見さんの唇で言葉ごと封じ込められた。

「おいで」

何も言えない私の手を引いて、奥にひっそりとあるドアを開ける。
さっきのとこよりこじんまりした部屋にはベッドルームになっていた。天蓋付きの豪奢なベッドが妙に浮いている。なんだか甘い匂いがしている。

「ここはホテルでもあるんだよね。あわよくばって思ってた」

いともたやすくベッドに押し倒され、また口をふさがれる。薄く開いた口に舌が差し込まれ、驚きに逃げ惑う舌が絡み取られる。ぼんやりと思考に霞がかかる。ベッドからも甘い香りがする。何の香りだろう。押しのける気にもならず、加賀見さんのシャツをきゅっと握る。

「甘い匂い、くらくらする」

「女性だけに効く媚薬効果のあるアロマがしみ込んでるんだって。眉唾だと思ってたけど、燈子さんキスだけでとろとろ」

加賀見さんの首に腕を回し、またキスをねだる。もう何でもよかった。媚薬の効果なのか頭がぼんやりして、体が熱い。それが媚薬の効果なのかわからない。今はとにかく欲しくてたまらない。

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