誰にも言えない、年下コーチに溺れた夜

・作

息子のサッカーチームが大会で優勝し、祝賀会でにぎわう夜。忙しい毎日に追われていた私は、息子たちを支えてくれる大学生コーチと初めてゆっくり言葉を交わした。酔ってしまった彼を車で送ることになった帰り道、不意に向けられたまっすぐな視線に、忘れかけていた女としての気持ちが揺れる。

「優勝おめでとうございます!」

居酒屋の座敷に、保護者たちの明るい声が響いていた。
息子の所属するサッカーチームが、市の大会で優勝したのだ。
子どもたちは別席でジュースを片手にはしゃぎ、大人たちも子どもたちの活躍を祝して、楽しい時を過ごした。

「お疲れさまです。斗真大活躍でしたよ!」

声をかけてきたのは、大学生コーチの空くんだった。
長身で爽やかな笑顔。
子どもたちに厳しく指導しているのにも関わらず、子どもたちから人気があるコーチだ。

いままでなかなか話す機会がなかったけれど、こうして話すと驚くほど穏やかで優しい声をしていた。

祝賀会が進むにつれ、空くんは先輩コーチたちから、すすめられるままお酒を飲み、みるみる顔を赤くしていった。
どうやら、まだ慣れていないらしい。

「ちょっと、酔ったかも」

店の外へ出ると、夜風の中で彼は困ったように笑った。

「送っていこうか?」

思わずそう口にすると、彼は少し驚いた顔をしてから、小さくうなずいた。

*****

助手席に乗り込んだ空くんは、シートにもたれて静かに息をつく。
車内にはほのかな香水と、彼の若い体温が混ざった匂いが漂っていた。

「今日は、本当におめでとうございます!」
「ありがとう。でも、一番頑張ったのは子どもたちとコーチでしょ」
そう返すと、彼はゆっくりこちらを向いた。

信号待ちで車が止まる。
「俺、年上の女性が好きなんですよ」

「いきなり何言ってんの?」
と笑いながら彼をみると、彼の手がそっと私の指先に触れた。
逃げるほど強くもなく、ただ確かめるようなぬくもりだった。

「めっちゃタイプです」

あまりにストレートな言葉に息が止まりそうになる。
母親としてでも、保護者としてでもなく、一人の女性として見つめられている。
その視線だけで、体の奥がじんわりと熱を帯びた。

次の瞬間、彼の顔が近づき、やわらかな唇がそっと重なった。
短く、優しい口づけだったのに、心まで揺さぶられる。

離れた彼がいたずらに笑う。

戸惑う私を見て、さらに彼は唇を重ねてきた。
シート越しに抱き寄せられ、髪を撫でる指先に目を閉じる。
唇をなぞるような優しい口づけが、だんだんと激しさを増す。

思わず小さく息が漏れた。
「かわいい」
年下のくせに、そんなことを言うなんて。
そう思いながらも、ドキドキは止まらない。

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