執事のつとめ (Page 2)

「お嬢様が知る必要のあることとは思えませんが」
「でも三雲」

伏し目がちに紅茶に息を吹きかける。

「私、知りたいの」

梢さまのような名家のご令嬢ともなると、その純潔には大変な意味がある。
近い未来に嫁がれるお相手は彼女の家柄と財力、容姿を重視されることだろうが、そこまでが整っていても浮名の絶えない令嬢では意味がない。
昔から正妻にするのは奥ゆかしく男を立てて三歩後ろをついて歩く、身持ちの固い処女が望ましいとされているのだから。令和になった今でさえも。

三雲家は代々、この一族の執事であり、よき友であり続けた。
ゆくゆくは当主として社交界に出る者が恥をかかないよう女との遊びかたを教え、
いつかは似たような上流階級に嫁ぐ者がしっかりと勤めを果たせるよう男の悦ばせかたを教えた。
「知りたい」といわれれば、必ず己の身体をもってそれに答えなくてはならない。
それこそが執事の義務であり、宿命であった。

「…素股といいますのは、セックスにおけるプレイのひとつで」
「うん」
「フェラチオは…前にお教えいたしましたね」
「うん、教えてもらった」
「ではおさらいしましょう」

彼女の隣に腰かけて、その手からほとんど飲まれていない紅茶を取り上げる。
ぱち、ぱちと梢さまの瞳が瞬いて、その期待するような輝きにこれからすることを受け入れられるだろうかと少し心配になった。

「お嬢様、まずはキスから」
「ん」

艶やかな桜色の唇に自分の唇をそっと重ねる。
目を閉じた梢さまは、何度か唇を合わせるとゆるく口を開けた。舌を差し入れれば控えめに絡めて、甘い吐息を漏らす。私が教え込んだとおりに。

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