執事のつとめ

・作

女子大生の梢お嬢様はえっちなことに興味津々。専属執事の三雲には、お嬢様から『教えて』といわれたら逆らえないという執事の決まりが。ある日お嬢様から「素股ってなぁに?」と質問され、三雲は身体を使ってレクチャーすることに…!

「すまたってなぁに」
「…はい?」

紅茶を淹れていた手が止まる。
素股?聞き間違いだろうかと顔を上げると、とんでもない質問をしてきた声の主――梢さまは、真面目な顔で真っ直ぐに私を見ていた。
私、三雲が身の回りのお世話を仰せつかっているこの梢さまは、日本で名前を知らない者はいない一流企業のご令嬢である。
三雲家は何代も昔からやんごとなき彼女の一族に仕えており、当然その流れに乗っていた私が中学生のときにお生まれになった梢さまの専属になって、もう20年が経とうとしている。
小学校に上がるまで私を兄だと思いこんでいた梢さまが、もう大学を卒業されるような年齢になったんだと感慨深くなった。

「ねぇ、聞いてる?」
「すみません、少し昔のことを」

軽く咳払いをして、ベッドに腰かけている彼女にソーサーごとティーカップを渡す。
それには目もくれず、梢さまはもう一度私の目を見据えた。

「すまたってなに?」
「…どこでそんな言葉を?」
「大学。友達がセックスできないならすまたにしたらって」

女子大の方が共学よりも飛び交う下ネタがエグいというのは本当なのだろうか。
タイツに包まれた脚をぱたぱたさせながら、梢さまはしれっと言い放った。
幼少のみぎりから女子校の箱入り教育のおかげか、それともその弊害か、梢さまは色ごとに関して疎い。
私の知る限りでは身内以外の異性と手を繋いだこともないだろうし、そんなことを許せば私の首にかかわる。
だから尚更たちが悪いのだ。

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