先生、お注射してください

・作

田舎に赴任した真希は退屈な暮らしを送っていた。そんな時、村にダンディな獣医師・圭吾がやってくる。逆ナンに成功した真希は、圭吾と情熱的なセックスを楽しむ。真希は欲望に抗えず、「お医者さんごっこ」をリクエスト。しかし圭吾のお医者さんごっこは、真希が想像した以上にハードなものだった…!

圭吾が最初の射精をするまで、私は3度イかされた。

「ごめん、余裕なくてがっついちゃった」

私に覆い被さったまま、圭吾が小さくつぶやく。

40代とは思えない童顔が、人懐っこい笑顔を浮かべていた。

「いいの。きもちよかった…から」

力なく返事をしたが、声が掠れてうまく話せない。

余裕がないとは思えないテクニックだったと、私は妙に感心していた。

「真希…」

圭吾が上目遣いで私を見た。

「ちょっと休憩したら、また抱いていい?」

年上の男のおねだりは、たまらなく愛おしい。

特に圭吾の場合は、雄々しい肉体とのギャップがあって、さらに私の心を鷲掴みにした。

「いいよ」

「よかった。次もたくさんイかせてあげるね」

その言葉だけで体が疼(うず)く。

これが相性というものだろうか。

会ったばかりの男と寝たのは、今夜が初めてだった。

*****

この春、東京の本社から地方の営業所に飛ばされた。

「空気がおいしい」と感じたのは最初の1週間だけで、あと8時に閉まるコンビニと虫の多さに泣いた。

田舎の人はやさしいと言うが、ここの住民は例外だ。

よそ者に厳しく、コミュニティは極めて閉鎖的。

そのくせ、東京の人間をジロジロと干渉する。

街を歩くとまるで島流しになった罪人の気分だった。

私ののどかな田舎ライフは、不便と孤独に耐久する修行へと変更された。

そんな荒修行の副作用だろうか、私は思いっきり誰かに抱かれたいと思うようになった。

今夜はその痴心が最大値だったのかもしれない。

役場で見かけた圭吾に、私は声をかけた。

*****

「しかし役場で逆ナンとは、君も大胆だね」

タオルで汗を拭きながら、圭吾がクスッと笑った。

「年寄りしかいない田舎にこんなイケメンがいたら、そりゃ声かけるわよ」

「真希は肉食系なんだな」

「そんな安っぽい言葉で片付けないでちょうだい」

私は圭吾の広い背中を、パシって平手打ちした。

「ごめんごめん。移住した初日にお誘いを受けて、僕は幸運な男だよ」

「口がうまいのね」

私は彼を部屋に誘ったことを、少し後悔し始めていた。

圭吾は童顔だが品のある造形で、見れば見るほどイイ男だった。

偉ぶったところがなく、紳士的なセックスをする。

時間かけてもよかったかな…。

昔読んだ恋愛ハウツー本が頭をよぎる。

会ったその日にセックスしろ、とはどの本にも書いてなかった。

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