無条件幸福 (Page 5)

石野さんは、ベッドのサイドボードのグラスに口をつける。からん…。小さな氷を咥える音。そして。がりっ、氷を噛む音。

「腰が、動いちゃうね。噛んでほしいの?氷みたいに?」

柚香に見透かされて、私は右手で自分の両目を隠す。私の目からも、下の口からも、快感のしるしが溢れている。

「あ…ぁあ…ん…」

私の乳房は弄ばれ続ける。

「言わなくちゃ、わからないって。ちゃんとお願いしなくちゃ…」

「…ん…んっ…噛んで…」

こり、こり。柚香が私の乳首を軽く噛む。

「私だけで、いいの?」

「…ふぁっ…ぁぁーん…あーん」

「ふふっ、もう泣かないで。ね、言って?」

「…んっ、ふぅっ…あぁ…いぃ…石野…さぁん」

「ん?…それじゃ返事来ないよ。ね、恭介さん」

くすり、石野さんの固い表情が和らぐ。

「…やぁ、ん…意地悪…しない…でぇ…」

「意地悪?してないよ」

石野さんの低い声が私の右耳に響く。声に貫かれたみたいに、びくっ、ビクッと身体が跳ねてしまう。

「ぁ、あぁあーン…噛んで…噛んでぇ…恭介…さん…」

恭介さんの大きな手が私の右頬を包んだ、と思ったときには、私の唇に恭介さんの舌が深く深く差し込まれていた。熱く荒く激しく。男の人…。匂いも、力も厚みも、硬さも…。

「いい子」

満足そうに、私の脚を大きく開かせながら、柚香は微笑む。

「ごめんね、葵。葵への気持ち…恭介さんに相談してるうちに、恭介さんの気持ちもわかって…。今日だけ、今日だけ私にも葵を、少しだけちょうだい。明日からは、また…ちゃんと…」

美しい涙が柚香の頬を伝う。

「ちゃんと、友達、になる…なりたい、からっ…。友達…なのにごめんね…」

私の臍にキスをして、ストッキングと下着を咥える柚香。

「あ…っ…!」

まさか、と思いながら。恭介さんの唇や、柚香から絶えず与えられる快楽に溺れて腰を浮かせてしまっていた私。

「や…あッ…はァン…」

私の陰部は、二人の前に晒されてしまう。私は両手で自分の顔を覆う。容赦なく恭介さんは私の胸を玩具にしている。

「美味しい…葵…」

グラスにあった氷が、私の乳房の上で滑る。恭介さんの舌に踊らされながら。氷の冷たさと舌の熱。首筋に、舌の熱だけが噛み付いてくる。

「ぁぁーん…恭介さん…柚香…」

こんな夜になるなんて。デスクでパソコンに向かいながら、柚香のグロスを選びながら、お酒を飲みながら。想像もしなかった。狂ってしまいたいくらい、絶えず重ねられる快感の烙印。溶けて自分がいなくなってしまうのではないかと錯覚するほどの。どうなるの、どうすればいいの。わからない。ただ委ねたい、この夜の熱に。熱を、声を上げて外に逃さなければ。私は燃えて消えてしまう気がする。

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    まつばやし さん 2021年3月10日

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