先生、気づかないフリしないでよ

・作

高校の同窓会で、大好きだった恩師と再会する。今でもその気持ちは変わっていなくて、ずっと隠していた恋心を伝えても、先生は冗談だと思って相手にもしてくれない。「私、もう子供じゃないんですよ?」そう言ったら先生の目つきが変わって……

今日は高校の同窓会。久しぶりに友人と会って、近況報告をしたりして。そんな中遅れてやって来たのは、恩師の伊藤先生だった。

 

伊藤先生は、私が高校時代に三年間担任をしていた。三年も一緒にいれば嫌な部分もたくさん見ることになるけれど、それでも私は密かに先生のことを恋い慕っていた。久しぶりに会う先生はやっぱりあの時のまま、というかあの時よりも年齢を重ねて大人びたように思える。そりゃまあ、私が出会ったのは新任の時だったから、多少変わっていても不思議じゃないんだけど。私は思い切って先生の隣の席に座って話しかけた。

「先生、久しぶり!私のこと覚えてる?」

「おお、愛花か!ずいぶん変わったな」

「あの時より可愛くなったでしょ?」

「化粧の力だな」

「その言い方ひどい~!」

こうやって私の言葉を受け流すところは相変わらずみたい。私は昔から、先生の掴みどころのないその雰囲気が好きだった。

「先生今何歳だっけ?」

「今年で30。てか敬語使えよ」

「えへへ、ごめんなさい」

悪びれもしないで言っても、先生は軽く笑うだけで何も言わない。だからずっとタメ口で話しかけているんだけど、そのうち先生も打ち解けた雰囲気で話してくれるようになるから面白い。

 

ひとり、またひとりと帰っていき、人が少なくなってきた頃。私は普段通りを装ってつぶやいた。

「私ね、高校の時、先生のこと大好きだったんだ」

「ふーん、今は?」

どうしよう……本当のこと、言うべきかな。私はちょっとためらいがちに本当のことを口にした。

「……今も」

「とか言って、先生のことからかっているんじゃないの?」

ほら、またこうやってかわされる。私は先生の目をまっすぐに見つめて言った。

「先生……私、もう子供じゃないんですよ?」

「子供にしか見えないよ」

「そう、ですか……」

「……そうやって、ごまかしてきたけどさ」

先生はそっぽを向いた後、テーブルの下で私の手にそっと触れた。それが、答えだった。

 

手を引かれるままにホテルへ行き、なだれこむようにしてベッドに二人沈んで。顔を上げれば、先生の顔が近くてドキドキしてしまう。思えば、こんなに近くで先生と話したことなんてなかったな。でも今は、大人になった今はもう、私たちを縛るものは何もない。引かれあうようにしてキスをすれば、もう止まらなかった。だってお互い、数年ずっと我慢してきたのだ。

「ふ、んん……ッ」

「はあ……愛花、もっと舌出して?」

言われるがまま舌を伸ばせば、よくできましたと褒められて。そのまま舌を絡み取られる。耳を塞がれると、私たちの舌の交わる音が直接鼓膜を震わせる。ぴちゃぴちゃと響く音に耳まで犯されている気分にさせられながら、私はどんどん先生のキスに溺れていった。

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