裏山の怪異と、大人の遊び (Page 4)
「キスしたい…」
——それは、自然にこぼれ出た言葉でした。
「キスしたいの…キス、わかる?くち…ある?お互いのくちをくっつけるの…」
こうして丁寧に説明していると、なんだかいけないことをしているような、ばつの悪い気持ちになります。
しかし、呼吸音とともに影の顔が近づいてきたので、私はそれを迎え入れました。
「ん…」
口、なのでしょうか。
わかりません。近づいても影は影です。視界は真っ黒に覆われ、湿った感触が唇に押し当てられました。
ちろ、と舌で舐めてみると影は一瞬だけ動きを止めましたが、影もまた舌のようなものを私に差し出しました。
「ん、ちゅっ…」
ぬめった舌は、人の舌に似ているような気もするけれど、もっと大きく、そして先端にかけて細くなっていました。
歯はまるで牙のように鋭く尖っていて、怪我をしてしまいそうでした。
そこで初めて、ほんの少しだけ怖くなりました。
それでも、口内を舌先でチロチロとくすぐられると、満足したはずの身体がまた疼きはじめてしまいました。
「んあっ…」
それは影も同じだったようで、繋がったままだったそこが再び動き始めました。
ぐちゅ…ぬちゅ…ぷちゅ…と私の愛液が掻き回される音に、また私の腟内がきゅう、と反応してしまいます。
「はぁっ…キス、もっとキスしたい…んっ、お願い…」
渇望が恐怖心を上回り喘ぐ合間にキスをねだると、影は再び私と唇を重ね、長い舌で私の舌を絡めとりました。
上も下も激しく求め合いながら、影の手は私の乳首をぐりぐりと押しつぶすように刺激します。
私はあまりの快感に、もう何が何だかわからなくなってしまいました。
「ん、んっ…!ぷはっ、あっ!あぁっ!いい…っ、きもちい…っ!ッ、あっ!また…!」
三度目の絶頂の予感にぎゅっと目を閉じると、影が低いうめき声をあげながら私の中でぶるっと震え、どくどく、と熱いものを吐き出しました。
「ああああッッ…!!」
そして同時に、私もまた果ててしまいました。
*****
影が私に覆い被さる形で、抱き合ったまま私は呼吸を整えていました。
そのあいだ、回らない頭で今回の帰省前のことを思い出していました。
——職場に婚約中の恋人がいたこと。
その彼に、職場内で二股をかけられていたこと。
同情や好奇の目に晒されて、居場所を失ったこと。
そしてそのとき、やっと思い出したのです。
あのころ私の唯一の居場所だった、『ともだち』の存在を。
「ね…私、今日から一週間ここにいるの。だから…明日もまた、来てもいい?」
影を抱きしめたままそう聞くと、影が低い声を発しました。
「アオイ」
それは、確かに私の名前に聞こえました。
影を見ると、ぼんやりしていた輪郭が、さっきよりも少しだけはっきりしているような気がしました。
私は、それに気がつかないふりをしました。
Fin.
レビューを書く