犬系男子は嫉妬深い。

・作

好きな人である光から遊び人と思われている南。いつも通り嫉妬している光をあしらっていれば、光の様子がいつもとは違っていて……。自分に従順だと思っていた彼は豹変し、無理やりベッドへ。ちょっと強引で刺激的な、知らない彼の姿に流されてしまう。

「ねーえっ、聞いてる!?」

 キッチンの換気扇の下でタバコの煙を吐き出しながら頷くと、光は眉間に皺を寄せながらまた不機嫌そうな声を上げた。

 「ねえ絶対聞いてない!南ちゃん!昼間一緒に歩いていた男は誰なの!?」

 「弟だって」

 「南ちゃんの弟は何人いるの!?1週間前一緒に歩いていた人だって弟だったじゃん!」

 肩からズレたブラトップの紐を正すと、何十回目かの質問に答えた。不満そうにぎゃあぎゃあ騒ぐのを聞き流しては吸い口に近付いた火種を灰皿の底で潰して消した。

 「浮気って、アタシたち付き合ってるわけじゃないじゃん」

 ぴた、と声が止む。部屋着に使ってる毛玉だらけのカーディガンはすぐ肩から落ちてしまう。なで肩はこれだから嫌いだ。首横で1つに纏めた髪をなんとなく手で梳くと、アイロンのせいでキューティクルの失われた髪たちが指に絡まった。

 キッチンからリビングのソファに戻ろうと振り返れば、銀のシンクに手が置かれていた。手から腕、腕から肩。ゆっくりと視線で辿っていけば、光がいた。

パーマのかかった茶髪が目元を曖昧に隠す。いつも笑っている口元は、何故か今はキツく閉じている。

 「何?邪魔なんだけど」

 わざと不機嫌そうに言うが、私の移動を阻む体は動かない。私より15cmは高い背に邪魔をされてはリビングに行けない。無理やり突破しようと胸板を押すがびくともしない。それどころか、光の腕は私の腰を掴んで抱き締めてきた。

 「離して」

 「もう限界」

 耳元で聞いたことがないような低い声がする。ぞわっと背筋が震えて、覆いかぶさるように抱き締められているこの状況がマズいということがわかった。怒っている。出会ってから一度も私の我儘に逆らわなかった光が、怒っている。

 「南ちゃんのことが大好きだから自由にさせてあげたけど、他の男とするんだったら俺にもさせてよ」

 カーディガンの中に手が入ってくる。体を捩るのもお構いなしに、その手はショートパンツのウエスト部分を引っ張って直に腰を撫でてきた。

 男性の手だ。骨張って、柔らかくない大きな手。骨盤を掴まれるだけで逃げられないってわかる。触れられたところに熱が溜まっていくのがわかる。思わず1つ息を吐くと、光が小さく笑った。

 「本当に男なら誰でもいいんだ?」

 ようやく見えた目は、何故か寂しそうだった。

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