魅せ、観られ。

・作

魅せる2人、観られる2人。スマホ越しの視線が交差した夜、静けさは熱へ変わる。釘付けの視線と止まらない衝動が、誰も知らない一夜を始動させる。綾乃は、観られる快感に抗えず、彼と淫らなん配信へ深く沈んでいく。

駅前ビルの二階、白いライトがガラス越しにこぼれる。仕事終わりの人波が、鏡面の床にほどよいざわめきを落としていた。

24歳のOL・綾乃は、人に見られることに密かな興奮を覚えるタイプだ。
そんな彼女の欲は、よく通う店のバイトの彼に向けられた。夜は配信者としても知られる彼に、自分の願望を少しずつ重ねていく。

彼女はドアを押す前から、自分の体温が半歩先に上がっていくのを感じる。
「…良かった。いつもの彼がいる。」

ラックの向こうで、大学生のバイトが別の客を案内していた。きびきびと真面目、言葉は丁寧で、折り目正しい笑顔。けれど彼女は知っている。夜の配信で別の名を名乗り、視聴者さんを相手に境界の手前で軽やかに戯れる、もう一つの顔を。

新作のシャツを手に取り、彼に声をかけると、彼はいつものように丁寧な接客で試着室へ案内した。

試着室のカーテンを閉めると、外のざわめきがふっと遠のいた。狭い空間に、鏡と自分だけが残る。
彼女は深く一呼吸置き、着ていたシャツと白のインナーをゆっくりと脱いだ。照明の白い光が、直接肌に触れる感覚が広がる。少しひんやりとした空気が身体をふわりと包み込み、肌の上をゆっくりと滑っていった。

ベージュのシャツを素肌に羽織る。ボタンはひとつも留めない。布が肌の上で軽く触れ、わずかにずれるたびに空気が揺れた。鏡の中には、普段よりもずっと無防備な自分が映っている。
襟の隙間から呼吸が出入りし、わずかに胸元の空気が震える。外の照明がカーテンの上部から漏れ、輪郭を白く縁取っていた。

彼女は指先でシャツの裾を整えながら、もう一度鏡の中の自分を見つめる。――この姿を見せるのは、彼だけ。
胸の奥で鼓動が速くなるのを感じながら、カーテンの端に手をかけた。

指先でカーテンを軽く引く。隙間から差し込む店内の光が、足元を細く照らした。深く息を吸い、胸の奥の高鳴りを抑え込むように吐き出す。
しゃっと布が左右に開かれる。

「……どう?」

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