今宵だけ…恋に溺れて犯す罪

・作

双子の姉が結婚することになり、婚約者を紹介された。相手はまさかの私の初恋の相手。蘇る恋心に悲しい気持ちで眠りにつくと、酔っ払った律樹くんが私を姉と間違えて布団に入りキスをしてきて…。想いが溢れた私は姉のフリを続けたまま律樹くんと身体を重ねてしまう…。

双子のお姉ちゃんの杏奈から婚約報告を受けて、婚約者に会ってほしいと呼ばれた杏奈の家で、私は目を疑った。

「こんばんは」

『…律樹くん…!?』

律樹くんは私の初恋の人で、ずっとずっと大好きだった人。

誰にも話さず、そっと胸の内に秘めていた私の片想い。

律樹くん、あの頃と全然変わってないな。

大人の魅力が増して、今のほうがもっと素敵になってる…。

そっか、杏奈と結婚しちゃうんだ…。

心を埋め尽くす言葉にもならない切なさに、二人の会話にも愛想笑いで相槌を打つのが精一杯だった。

*****

『そろそろ帰ろうかな』

「え?もう遅いし泊まっていきなよ。私のパジャマもベッド使っていいから」

『そんな、悪いよ』

「なに遠慮してんの!私たちもう少し飲んでるから眠たかったら先に寝てて」

『じゃあ…お言葉に甘えて…おやすみなさい』

杏奈のルームウェアを借りて、ベッドに横になった。

いつもここで体を重ねてるのかな…。

やだな…そんなの…。

なんで…杏奈と私、双子で顔も声もそっくりなのに…。

どうして私じゃなくて杏奈なの…?

身勝手な嫉妬に涙を流しながら、目を閉じて眠りについた。

*****

『んッ…』

唇に触れた柔らかな感触とお酒の香りに、目を覚ました私は驚いた。

目の前には、律樹。

私の髪を撫でながら、角度を変えて何度もキス繰り返した。

お酒の香る甘いキスの嵐。

『ッ!?律樹くッ…んッ…』

「杏奈、好きだよ」

律樹くん、酔って私を杏奈と間違えてるの?

“私、杏奈じゃなくて環奈だよ”

喉まで出かけた言葉をぐっと飲み込んだ。

だって、律樹くんが真実に気づいてしまったら、その瞬間、この夢のような時間は終わってしまう。

それなら、今夜だけ、律樹くんが欲しい。

本当は環奈って呼んでほしいけど…でも律樹くんと一瞬だけでも結ばれることができるのなら…。

何度もキスを交わす内に、杏奈への罪悪感よりも、自分の恋心のほうが上回ってしまった。

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