風邪を早く治すにはたっぷり汗をかくこと!エッチな運動しちゃいましょう (Page 2)

 
 かごを片手にスーパーを物色しているとポケットの中のスマホから通知音が聞こえた。
 
 『風邪を引いてしまったようです。うつしたら悪いので今日は大丈夫です。いつもありがとうございます』
 
 風邪、か。沢谷さんの家、ちゃんと食べられる物あるのかな。
 
 『大丈夫ですか?熱は測りましたか?』
 『微熱程度で食欲もありますし、大丈夫です。様子を見て治まらなければ週明けに病院へ行こうかと』
 
 よかった。そんなに酷くはなさそう。
 
 『薬や食べ物はありますか?』
 『なんとかします』
 
 なんとかしますって…。
 
 スマホとにらめっこしながら、視線を泳がせる沢谷さんを思い出す。沢谷さんは気まずいときや誤魔化したいことがあるとき、わかりやすく視線を逸らす癖があった。
 
 私は適当な食材を見繕い、ドラッグストアで自分用のマスクと薬を調達し、沢谷さんの家のチャイムを鳴らした。
 
 『もしかして、家の前にいます?』
 『はい。追い返されたら悲しいなー』
 『僕なら大丈夫ですから』
 『差し入れ買って来ましたから、顔ぐらい見せてくださいよ』
 
 少し待つとドアが控えめに開けられた。その隙間から、白いマスクと黒いスウェットの上下を身に着けた、ボサボサの寝癖姿の沢谷さんが見える。いつも小綺麗にしている沢谷さんのよれよれな格好が新鮮で、ちょっと可愛く思えてしまう。
 
 「恥ずかしいのであまり見ないでもらえますか」
 「すみません。珍しくてつい。思ったより元気そうで安心しました」
 「だから言ったじゃないですか。大丈夫だって」
 「でも薬とか食べ物とかないんじゃないですか?」
 
 う、と言葉に詰まった沢谷さんはやっぱり視線を泳がせる。
 
 「立ち話もなんですから」
 「それは招き入れる側が言う台詞なんですよ」
 「生姜たっぷり卵うどんなんてどうですか?」
 「…いただきます」
 
 かくして私は今日も沢谷さん宅のキッチンで料理をすることになった。

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