風邪を早く治すにはたっぷり汗をかくこと!エッチな運動しちゃいましょう

・作

些細なきっかけで隣人の彼に度々夕食を振る舞うことに。いつも通り献立の相談メッセージを送ったら、風邪を引いてしまったと返事が。家に食べ物や薬がなさそうで、差し入れを持ってお見舞いに行くも、弱った彼が可愛くてエッチな展開に…!?

内に響くお腹の音。私のじゃない。音の出処は、私の後から乗ってきた少し年上っぽいサラリーマン風のスーツ姿の男性だ。あまりの豪快な音につい笑ってしまい、男性の背中は恥ずかしそうにしている。
 
 「…お腹空きますよね」
 「昼食を食べ損ねてしまって」
 
 時刻は19時。私は仕事終わりで帰宅し、その出立ちから恐らく彼もそうだろう。この時間まで食事をしていないなんて、お腹の虫があれだけ盛大に騒ぎ出す訳だ。
 
 「晩ご飯のご予定は?」
 「家に何も無いし、面倒なのでこのまま寝ようかと思ってました」
 「えっ」
 
 私はお腹が空いていると眠れない質なので、思わず信じられないというリアクションをとってしまった。それが合図とでも言うかのように、エレベーターが自分の部屋がある階で止まった。
 
 「それじゃあ、おやすみなさい」
 
 男性の部屋も同じフロアらしい。軽い挨拶をしてエレベーターを降りた男性に私も続いた。
 
 「私もこの階なんです」
 「そうなんですね」
 
 スーツの背中を追いかけるようにしてマンションの廊下を歩く。このフロアには5部屋あって、私の部屋は奥から2番目だ。男性がどんどん歩いて行き、一番奥のドアの前で立ち止まったのを見て少し驚いた。
 
 「あれ」
 「お隣さんだったんですね」
 
 そう言った彼も驚いた様子で、眼鏡の向こうの目がぱちくりとしている。このマンションに住んで二年ほど経つが、隣人を見かけたのは初めてだった。何なら人が住んでいたことも知らなかった。
 
 ―――ぐぅぅぅぅ~。
 
 会話に混ぜろと言わんばかりに彼のお腹の虫がまた鳴いた。恥ずかしそうに目の前のドアに向き直って、カバンから鍵を探す彼を見かねて、つい声をかけてしまった。
 
 「ご迷惑でなければ何か作りましょうか」
 
 彼がそこで頷いたことをきっかけに、それからはなんやかんやで週末の度、互いに予定がなければ私が彼に夕食を振る舞い、時にはお弁当や作り置きも差し入れる仲になった。あくまでも私がしていることは彼から材料費を貰い、見合った料理を作るだけ。
 
 彼は沢谷静と名乗り、私の5つ上だった。物腰柔らかで丁寧、ちょっと抜けているところがあって、つい世話を焼きたくなってしまうような可愛い人。
 
 そんな私と沢谷さんとの習慣が馴染んで半年。土曜の昼下がり、いつものように隣の彼にメッセージを送る。
 
 『今日はキーマカレーにしようと思っていますが、他に食べたいものあったりしますか?』
 
 しばらく待ったが返事がない。外出しているのか昼寝でもしているのか、わからないがひとまず買い物へ行くことにした。 

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