身勝手な束縛 (Page 3)

何も語られないままタクシーで着いた場所はホテル。尋常じゃない手のひらの汗がこれからを物語る。

部屋に一歩足を踏み入れた途端、壁に押し付けられ唇を塞がれる。頬を包み込む手は濡れていて上唇を噛んで目が合えば、燃えるような目を向け逸らさない。

「ちゃんと俺を見て、好きだと言いなよ」

少し大きく開けた唇が、角度を変え何度も何度も、私ごと奪う。

「城くん…好き、…好き…!」

フッと笑う城くんはこんなにも男だったこと。高鳴る胸がその証拠。そして気が付いた…

城くんと一緒にいる時間は涙を忘れていることに。

「城く…」

「恵太、だよ」

「恵太」

名前を呼ぶと大きな背中を曲げて胸元に唇を寄せる。吐息も、這う舌で火傷しそう。

「ごめん。これ以上外に、みほさんの甘い声聞かせられない」

壁にもたれる私を軽々と抱えベッドに着くと、横たえた私を跨いだ。

照明を背に受け色っぽい陰りを見せる恵太に、それだけで私の下腹部は甘い蜜を垂れ流す。

ゆっくりと焦らすようにボタンを外す。重みを受ける腰の中心は、恵太の熱い尖りの感触。

ピクリと反応を示す私に気付いた恵太は、グッとさらなる重みで、私を閉じ込めた。

「ぁ…」

重みが消えるとそのまま恵太は、股の間に体をいれすぐさま熱い吐息が秘処へと吹き込まれる。

片脚は彼の肩まで上げられ恵太の頭で身体を支えてしまう。少し目線を下げれば私の中心で上下に動く黒髪が揺れて…

「んあぁあああっー!」

今までにないくらいの絶頂が私を襲う、それでも。

「だ、だぁめぇ!ぴくぴくしてるから、やっあぁ!」

ふぅーと大きく息を吐いた恵太の目は獰猛で、それだけでまた張りつめる爪先、頭を振り乱しさらなる絶頂が私へ押し寄せる。

恵太…自分でもむず痒いくらいの甘い声に心躍る。ベルト、ジッパー、シャツ…早く脱がせて肌と肌を触れ合わせたいと思ってしまう。

本能に突き動かされるがままもっと、もっと密着したくて縋るように恵太を求める。そのたび力強く私を包んでくれるから。

「幸せすぎて怖い…」

「みほ、大丈夫」

優しい笑みを零しながら、ぐっと深い突き上げに仰け反る背中。

チカチカするほどの熱さに軽く戸惑ったのは最初だけ、すぐ解放される律動に粘膜の擦れる音までが二人を夢中にさせる。

「ンん…っああぁ…!恵太…」

「みほ、愛してる」

視線と囁く声にあっという間に支配されて、何度目か分からない絶頂へと誘う恵太の昂りは、私の中で巧みに強弱をもって繰り返される。

「ごめんね、みほ」

もう我慢できないと、脚を持ち上げ最奥へ打ち付けるような激しいピストンに、甘ったらしい声が止まない。

っああぁあぁん…ぃっ!

果てる瞬間にもう一度だけ私を射抜き、うねりと共に熱い滾りが放出された…。

しばらくして目が覚めると、温かな腕に包まれていて、隣には静かな寝息をたてる恵太。薄暗い部屋に目を凝らすと情事のあとが点々と見えて今さら恥ずかしさにシーツを被る。

「ふふ、みほ、えっち」

「お、起きてたの?」

「誰かさんの百面相でね。みほ…」

「ん」

2、3度雅貴は、恵太に私のことをどう思っているのか聞いてきたことがあるらしく、最初はただの会社の先輩、後輩だと誤魔化していたが。

恵太がみほに気があるのは同僚にはバレバレで。知らないのは本人だけ。そしてもう一つ、みほだけ知らない重大な秘密が。

「えっ」

「みほに社内恋愛禁止だから、2人のこと黙ってて欲しいて言われておかしいとは思ってたんだ。でも、その時にはもうみほのこと好きだったから、大橋さんのことしか言わない時間でも、俺には必要だった」

「…」

「…ちょっと、恥ずかしいんだから何とか言ってよ」

軽く頬を膨らます恵太が可愛い。

「…恵太、ありがとね」

「!」

みほ本来の持つ穏やかな笑顔に反応を示すのは恵太だけでなく…何も纏わない体、あっという間の昂りに反応した時にはベッドが揺れて。

腰に回されていた腕が、みほの秘処をなぞれば、くちゅりと聴覚からも二人を煽るには十分で。

「…挿れていい?」

「もう、聞かないで…」

「言わせたい。それに、もうこの口からは俺のことだけしか言わせないから」

「っ…」

一瞬でみほの体が赤く染まり、みほの中がきゅうっと締めつけ恵太の指にも伝染ることで、二人の気持ちは同じなんだと。

雅貴は、自分と別れてもみほが他所を向くのを避けるためだけに、社内恋愛禁止という嘘で縛りつけていたのだった。

Fin.

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