神様からのおくりもの

・作

暑い夏の夜、雨が降る日。数年前の夏の記憶を辿っていた。夏祭りの日、神社の本殿で神様に見守られながら愛する人と身体を重ねた夜のことを。俺の愛撫で鳴く声も、鼻を掠める欲情したイヤラシイ香りも、何もかもはっきりと覚えている。

この季節が来る度にいつも思い出す。

数年前の夏の思い出。

あの日も、今日みたいにうだるような暑さで、予報外れの雨が降った夜だった…。

*****

今日は近所の神社で開催される小さな夏祭り。

笛や太鼓の音が鳴り渡り、行き交う心が浮かれた浴衣姿の人たち、まさにお祭りムード。

でも俺の目を惹くのはたったひとり、隣を歩く彼女の千夏だけ。

いつもとは違うヘアアレンジでおめかしをして、嬉しそうに綿菓子を口にする千夏を見ていると、思わず笑みが浮かんでしまう。

だけど次第に千夏の顔が曇り始めて…。

「大丈夫?疲れた?」

『ちょっと…人酔いしたかも…』

「ちょっと離れたところで休憩しよっか」

『ありがとう』

千夏の手を掴み、神社の奥へと進んでいく。

本殿まで来ると、お祭りの屋台もないせいか、人の姿は見当たらず、先程の騒がしさとは対照的に辺りを静寂が包み込んでいた。

「ここなら静かでゆっくりできるだろ?」

『そうだね、ありがとう』

ふと空を見上げると、さっきまで見えていた無数の星たちを、分厚い雲が覆って隠してしまっている。

「雲行きが怪しいな…雨降ってきそう」

そんなことを言っている間に、予報では伝えられていなかった雨が降り始め、地面にぶつかった水滴が勢いよく弾け飛んでいた。

『本当に降ってきた。せっかくのお祭りなのに…』

「まぁ、通り雨かもよ?ここなら雨も凌げるし」

『そうだね』

俺の隣にちょこんと腰掛け、甘えるように肩へもたれかかってくる千夏。

『翔くん、好きだよ』

「俺も、大好き」

白い頬を桜色に染めながら愛の言葉を紡いでくれた千夏が、あまりにもいじらしくて愛おしくて、彼女の唇にキスをした。

『んッ…』

ただ、そっと重ね合わせるだけのキス。

だけど、長いキスの中で不謹慎にも身体が反応してしまう。

この自然現象は男という生き物の性なんだ。

千夏、こんな時にこんな場所だけど、どうか許してほしい。

もっともっと千夏に触れていたい。

今すぐ千夏が欲しくてたまらない。

そっと唇を離し、開口一番に素直な気持ちを伝えた。

「ごめん、千夏…シたくなった」

『え?急に?』

「これが俺らの夏祭り…的な?まぁ、雨が止むまでちょっとだけさ」

この雨だって、二人だけの時間のために神様が俺にくれたプレゼントかもしれない。

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