恋の駆け引き
大学のサークルの部室で好きな子と二人きり。そんな状況に浮かれていたのに彼女は先輩の話ばかり。嫉妬のあまり言ってしまった「好き」の気持ち。すると彼女も同じ気持ちだとわかって。キスだけのつもりが、その先を求められて…。お望み通りキスの先の甘い時間を…。
『さっきね、千歳先輩が色々教えてくれて、ほんとかっこよくて』
ひまりの言葉に、チクリと胸が痛む。
好きな子と大学のサークルの部室に二人きり。
そんな状況が嬉しくて仕方なかったのに、さっきからひまりときたら千歳先輩の話ばかり。
確かに千歳先輩は、誰が見てもかっこいい。
男の俺から見たって、非の打ち所がない。
俺なんて、到底足元にも及ばない。
女性なら千歳先輩のような男に惹かれるんだろう。
「ひまりは、千歳先輩が好きなの?」
嬉しそうに千歳先輩の話をしていたひまりの顔をじっと見つめて問いかけた。
『んー…わかんない。好き…なのかな?』
ズキン、ズキン…
さっきからどうしようもなく、胸が痛い。
これはきっと、嫉妬だろうな。
他人を妬んだところで恋が叶うわけでもないのに…。
わかっていても、好きな子が他の男を好きかもなんて聞いて、おもしろいわけがない。
どうしようもない嫉妬心が渦を巻く。
『周助…?顔、怖いよ?』
「どうしてだと思う?」
『…なんでだろ…?』
「さぁ。なんでも教えてくれる千歳先輩にでも聞いてくれば?男心がわからないから私に教えてくださいって」
あぁ、ダサいな…俺。
勝手に妬いて、勝手にふてくされて。
『…あっそ。わかった、聞いてくる』
そう言い捨てたひまりの顔は、何故だか、呆れたような、曇ったような、そんな感情が入り混じった表情を浮かべていて、そのまま部室を出て行こうとする。
俺は焦って、言葉より先にひまりの腕を掴んで引き留めていた。
「冗談じゃん。まさか本当に千歳先輩のところ行く気だった?」
『だって、周助が聞いてこいって言ったから』
「言ったけど…まさか本気にするなんて思ってなかったし」
『千歳先輩のところに行ってほしくないの?』
“行かないで”
その言葉の代わりに、俺はひまりをギュッと抱きしめた。
「俺じゃダメなの?…千歳先輩がいいの?」
『もしかして…妬いてる?』
「うん、すっごい妬いてる」
『なんで?』
「好きだからだよ。もうわかるでしょ?ひまりが好きなんだよ。俺以外の男の話なんて嬉しそうにしてほしくない」
言ってしまった。
全然、思い描いていた告白とは違うけれど…。
だけど、想いが溢れ出して、自然と口から零れてしまった。
『私もだよ。私も周助が好き』
「千歳先輩が好きなんじゃないの?」
『ごめん、ちょっと駆け引きしちゃった。周助の気持ちが知りたくて』
「はぁ…ずるいな、ほんと。勢いで好きって言っちゃったじゃん」
『ごめん』
「じゃあ、これで許してあげる」
俺は掴んでいた腕をグッと引き寄せて、そのままひまりの柔らかな唇にキスをした。
そっと、触れるだけの優しいキス。
『んっ…』
何、その可愛い声…。
名残惜しい気持ちで唇を離すと、ひまりが少し背伸びして、俺の耳元で囁いた。
『キスだけで…終わりなの?』
なんて小悪魔な…。
悔しいけれど、彼女の方が俺より何枚も上手みたいだ。
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