別れたはずのヤンデレ元カレに溺愛される

・作

友人の恋人を紹介されるべく呼ばれた家飲みで、現れたのは別れたはずの恋人だった。仲睦まじそうな二人に冷や汗をかきながらも話を合わせていると、たまたま二人っきりに。まだ付き合っていると主張する元カレから与えられる快楽にダメだとわかっていても抗えず…。

「聞いて!彼氏できたんだ!今度紹介するよ!」

と、言われたのが先週の話。

親友の志鶴が自身の恋人を紹介したがるのは今に始まったものではない。

友人になった頃から恋人に関しては特に惚気たり自慢話をしたがる子で、なんの疑問もなく了承した。

そして顔合わせ当日。

「初めまして。志鶴の彼氏の、宏隆です」

そう言って笑顔を向けるのは、私の元カレだった。

*****

「それでねー!一目惚れだって言ってくれてー付き合ってもいっかなーって思ったの!」

志鶴の家で馴れ初めを聞きながら私は笑顔のまま麦茶に口をつけた。

元カレ、もとい宏隆は照れたように笑うばかりでまるでこちらのことなど知らない相手のように振る舞う。

それが妙に恐ろしく、冷や汗が止まらなかった。

彼から離れるために別れたのに、また出会うだなんて思いたくもなかったから。

「あー!ごめーん!お酒ゼロだ!」

冷蔵庫を漁っていた志鶴が申し訳なさそうに顔を出した。

「なら私買ってこよっか?」

「いや車で行っちゃう!二人は待っててよ!」

なるべくここから離れたくて提案するも、志鶴はさっさと車の鍵を持って玄関まで行ってしまう。

慌てて後を追いなるべく平然を装いながら口を開いた。

「せっかく呼んでくれたのに申し訳ないよ。私もついていく」

「いいっていいって!あ、じゃあさ!おつまみ作っててよ!楽しみにしてるから〜」

私の静止も聞かぬまま志鶴は玄関を出てしまう。

訪れた静寂に呆然と立ち尽くすことしかできない。

あの男はどうして再び私の前に現れたのか。

これは偶然なのだろうか。

そのようなことばかりが頭を巡る。

「ねえ」

「っ!?」

不意に背後から声をかけられ心臓が跳ね上がる。

慌てて振り向けば宏隆が小首を傾げていた。

「志鶴いっちゃったし、おつまみ作らない?」

それはまるで、付き合っていた頃のように笑ったのだった。

私が思わず後退りする。

しかし即座に腕を掴まれてしまいそれ以上動くことができない。

「な、なに…」

「なんで離れるの?」

「なんでって…だって、私たちはもう別れてるし…友達の彼氏と変に近づけないじゃん」

そう、そうだ。

理由はどうあれ今は友人の恋人なのだ。

過去に何があろうと今二人が幸せなら私が口出しすることではない。

それこそ、変に反応して浮気を疑われる方が面倒だ。

腕を振り払おうと力を入れるが、それ以上に引っ張られ抱きしめられる。

喉の奥がヒュゥッと鳴った。

体は強張りなにが起こったのかわからない。

「別れてないよ」

「え?」

「別れてないでしょ?」

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